危険がつきまとうベトナムの海外就労者 バンコク・高木香奈

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英国で10月23日にベルギーから到着した冷凍コンテナ内から39人の遺体が見つかり、全員がベトナム人と判明した。

10代から40代で、出身は北中部ゲアン省(20人)とハティン省(10人)が多数を占めた。その地名を聞き、東京で勤務していた6月と7月に、在日ベトナム人の支援をしている港区の寺院「日新窟」の紹介で会った2人のことを思い出した。

ゲアン省出身のグエン・ドゥック・フーさん(34)は2016年8月に技能実習生として来日した。名古屋の工事現場で1日14時間働き、給料は6万円余り。渡航準備のために約150万円の借金があった。これでは借金を返せないと3カ月で失踪し、岐阜県や滋賀県などで清掃や梱包、農業などを転々とした。ある日、脳梗塞で倒れ、半身不随になった。治療費は800万円超。医療保険もなく、友人らの寄付で約40万円を病院に支払ったが、残りは払えなかった。6月13日、同郷の友人に付き添われて帰国した。「日本に来たのは失敗だった」と話していた。

ハティン省出身のグエン・スアン・ズンさん(27)は14年に技能実習生として来日、静岡県の水産加工会社で3年間働いた。ビザが切れても日本で働き、家族に送金したいと、店員、解体、清掃などの仕事をした。6月にひどい頭痛に襲われ市販薬を飲むと、体中に水疱ができて高熱が出た。意識を失い、一時は大学病院の集中治療室に入った。7月3日に退院して入管に出頭、退去処分となりベトナムに送還された。後遺症で目が見えにくくなっていた。

出発前の羽田空港のロビーで、車いす姿のズンさんは「療養して、車を修理する仕事につきたい」と話していた。ただ、ベトナムでは高成長率の一方で若年層の失業率が高く、退去処分を受けての就職活動は簡単ではなさそうだ。

2人の出身地は相対的に貧しく、海外で就労機会を求める若者が多い地方として知られる。英国の事件では、日本に滞在経験のある若者も犠牲者の中にいた。2人も、体調が戻ったら危険な思いをしてまた渡航することにならないだろうか、心配になった。(アジア総局 2019年12月)