サプライズ人事 ジャカルタ・竹内彩

ジャカルタ武内インドネシア政治の不可思議さが現れた組閣となった。10月20日に2期目の就任式を終えたジョコ・ウィドド大統領は3日後、38人の閣僚を任命した。最も驚いたのが、4月の大統領選で争ったグリンドラ党のプラボウォ党首を要職の国防相に任命したことだ。プラボウォ氏は、選挙中は激しくジョコ氏を非難し、結果発表後は落選を受け入れずに憲法裁判所に提訴までした。支持者の一部が暴徒化して治安部隊と衝突し、死傷者まで出した。にもかかわらず、あっさりと大臣職におさまったのだ。

手打ちのような人事で「最大野党」だったグリンドラ党は連立入りし、国会は575議席のうち75%近くを与党側が占めることになった。プラボウォ氏の入閣は今回が初めてで、国防相は本人の希望だったとの観測だ。スハルト独裁政権下で陸軍戦略予備軍司令官などを務めた経験があり、選挙戦でも度々国防について持論を展開していた。ただ、スハルト政権末期に活動家らの拉致に関わった疑いが持たれ、後に軍籍を剝奪されている。本人は一貫して関与を否定しているが、活動家13人は今も失踪したままだ。

プラボウォ氏の入閣に対し、世論は意外なほど落ち着いていた。死傷者まで出しながら「裏切られた」格好の支持者が反発したり、ジョコ氏の支持者から反対意見が噴出したりすると構えていたが、表向きは人権活動家が危機感を表明したくらいだ。地元紙「ジャカルタ・ポスト」は、プラボウォ氏の思惑や資質に懐疑的ながらも、社会の分断は食い止められたという論調だ。24日付の論説では「分極化がましになったか、解消したかはさておき、今後5年間で
民主主義を向上させる余地はできた」とした。

他のポストも与党各党から選出し、バランス重視の布陣となった。ルトノ外相やスリ・ムルヤニ財務相ら重要閣僚は続投で、サプライズ人事は教育・文化相に任命されたバイク配車サービス最大手「ゴジェック」創業者のナディム・マカリム氏(35)くらい。組閣前は世代交代が進むと期待が高まっていたが、結局は旧来の名前が並んだ。規定上3期目はなく、ジョコ氏は5年後の選挙を気にする必要はない。支持者の期待よりも安定した政権運営を優先させたのだろう。(ジャカルタ支局 2019年12月)