「中華民国」と台湾 台北・福岡静哉

•Ÿ‰ªÃÆ@–{ŽÐˆõ@­Ž¡•”@m‹LŽÒ‚̖ځn台北市で10月10日、辛亥革命を記念する「双十節」の祝賀式典があった。台湾ではこの日が「建国記念日」で毎年、総統の演説やパレードがある。この双十節をめぐり、自民党青年局のツイートがソーシャルメディア上で物議を醸した。

まず歴史的な背景をおさらいしたい。辛亥革命では、中国革命の父、孫文が清王朝を倒して中華民国を建国した。その後、蒋介石が国民党を率い、総統となった。1945年に日本が中国から撤退した後は、国民党と毛沢東率いる中国共産党との内戦に突入した。共産党が勝利して49年、中華人民共和国を建国。蒋介石は、兵士らと共に「中華民国」ごと台湾に逃れた後も、中国全土を治める正統な政権であると訴えてきた。これに対し中華人民共和国も、台湾を含む中国全土が「一つの中国」に属すると主張。「中国」をめぐる本家争いは共産党の勝利で事実上、決着がついたと言えるにもかかわらず、今も終わっていない。日本は72年に中華人民共和国と国交を正常化。日本と「中華民国」は同年、断交した。

台湾の正式名称は今も「中華民国」。憲法では中国全土や現在のモンゴルまでを領土と規定しており、実体とはかけ離れている。これに対し、戦前から台湾に住んでいた「本省人」を中心に、中国本土由来の「中華民国」は「外来政権」であるとして「台湾」の名称での独立を求める運動が続いている。

双十節当日。「10日は台湾の建国記念日です」。自民党青年局は公式ツイッターで日本語と中国語を使い、祝福を表明した。青年局は長年にわたり台湾側との窓口役を担ってきた。ソーシャルメディアでは「『台湾』ではなく『中華民国』の建国記念日だ」「自民党青年局は基本的なことすら知らない」との指摘が相次いだ。青年局は「台湾の双十国慶日です」と訂正した。日本政府が国家として認めていない「中華民国」の表現を使うことをためらった末の、苦肉の策だろうか。

台湾側と長年にわたり交流してきた岸信夫・元副外相(安倍晋三首相の実弟)は8日、「中華民国台湾 国慶双十節 おめでとうございます!」とツイートした。蔡英文総統も同じ表現を使っている。中国側を刺激せず、台湾の独自性もにじませることができるギリギリの表現という判断だろう。(台北支局 2019年11月)

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双十節の祝賀式典で演説する蔡英文総統=台湾総統府提供