英国で懸念強まる極右の暴力とテロ ロンドン・服部正法

外信部デスク 服部正法

アフリカ特派員時代にイスラム過激派のテロ取材に力を入れてきたこともあり、安全保障情報の拠点・ロンドンへの赴任直後、当地のテロ専門家に早速話を聞きに行った。ロンドンを含めパリやブリュッセル、マンチェスターなど、欧州では数年前から過激派によるテロが相次いでいるのは周知の通り。もちろん専門家たちのイスラム過激派ウオッチングは怠りない。だが、某専門家が「今後の問題はこれ」と声に力を込めたのは、極右による暴力とテロだった。

英国では欧州連合(EU)離脱を決めた国民投票(2016年)の直前、EU残留派の労働党女性下院議員が極右思想や白人至上主義に感化された男に殺害された。この事件以外にも、同党女性議員への極右の男による殺害計画が明るみに出たケースもある。先月にはまた別の同党女性議員が、離脱の議論に絡み「多くの同僚議員が殺害の脅しや嫌がらせにさらされている」と議場で明らかにする場面もあった。

英警察の対テロ部門トップは今年9月、全体のテロ・暴力事案の取り扱い件数に占める極右の事案の割合が2年前の6%から10%に上昇したと明かし、「最も急速に伸びている問題」と懸念を表明した。

また、英政府が17年に発足させた「対過激主義委員会」は今月報告書を公表。イングランドとウェールズの約20都市で3000人から聴取した内容をベースにしているが、西洋の思想や生活様式を排撃するイスラム過激思想と並び、「外国人によって地元住民が人種的・文化的脅威にさらされている」とする極右の言説が、地域で拡大・浸透していると警告した。

世界中に極右団体は多くあるが、テロを起こすのは、50人以上が殺害されたクライストチャーチ(ニュージーランド)事件の容疑者のように、「ローンウルフ(一匹オオカミ)型」ばかり。テロ組織の指示を受けた戦闘員による犯行が目立つイスラム過激派とその点で傾向が異なり、兆候をつかんで犯行を未然に防ぐのはより困難なようだ。今後、国際的に極右の動向を注視していく必要がある。(欧州総局 2019年11月)