ギグ・エコノミーの転機

福永方人P「ウーバー」「リフト」の2大配車サービスが普及する米国では、タクシーよりも使う機会がはるかに多い。スマートフォンのアプリで現在地と行き先を入力して手配すると、近くにいる登録車がだいたい数分で到着する。オーダー時に料金が明示されるため、タクシーのようにメーターの上がり方を心配する必要もない。

移民が多い運転手との会話も楽しい。出身国はメキシコなど中南米系からアジア、中東、アフリカなどさまざまで、各国の事情などを聞くことができる。中には音楽を大音量でかけて熱唱するちょっと迷惑な人もいるが、そこはご愛嬌だ。

そんな配車サービスに代表される「ギグ・エコノミー」が今、社会問題となっている。ギグはジャズなどの一回限りの演奏を意味することから、単発の仕事を請け負う働き方で成り立つ経済をギグ・エコノミーと呼ぶ。好きな時間に自由に働ける手軽さが受け拡大する一方で、「搾取経済」との批判が強まっているのだ。運転手らは「個人事業主」の位置づけで、サービス運営会社との雇用関係はないため、医療保険などの福利厚生が適用されない。さらに、車両は自前で用意しなければならず、ガソリン代や維持費も自分持ちとなる。実際はフルタイムで働く人が少なくなく、ストライキを打つなどして待遇改善を要求している。

ウーバー、リフトの本社がある米西部カリフォルニア州では9月、ギグ・エコノミーの労働者を従業員として扱うよう企業に義務づける画期的な州法が成立した。従業員になれば最低賃金保証や有給休暇などの対象にもなる。他州にも追随の動きがあるとされ、転機となる可能性がある。政情不安が続く南米ベネズエラから同州ロサンゼルスに移住した30代の男性運転手は「生活が苦しいので、新法で労働条件が良くなってほしい」と期待する。ただ、コスト増加を迫られる両社は同法の是非を問う住民投票の実施に向けロビー活動を始めており、来年1月の施行までには紆余曲折も予想される。

日本では料理配達サービス「ウーバーイーツ」の配達員が10月、ウーバーにけがの補償などの改善を求めるため労働組合を結成した。カリフォルニアの動向も注目を集めそうだ。(ロサンゼルス支局 2019年11月)

米西部カリフォルニア州の新たな州法による待遇改善を期待するウーバー運転手=同州で10月、福永方人撮影