党と企業 北京・赤間清広

北京赤間

「会議の席次を見て、驚いた。あいつは党内ではこんなに偉かったのかと」。中国で現地企業と共同出資会社を運営する日系メーカー幹部がこんな経験談を教えてくれた。

中国共産党は党員が3人以上所属する会社に対し、党組織の設置を義務付けている。しかし、その運営実態は必ずしもすべて開示されているわけではない。先の幹部は自社の党組織の会合に来賓として呼ばれ、そこで初めて「幹部構成を知った」という。

すべてに党が優先する中国では外資や民間企業といえども、そのくさびから脱することはできない。
2018年11月、中国共産党機関紙、人民日報は改革開放に貢献した表彰者リストを発表。その中の一人、中国電子商取引(EC)最大手、アリババ集団の馬雲(ジャック・マー)会長が「党員」だと明かし、国内外に衝撃を広げた。1999年にアリババを創業し、中国IT(情報技術)界をリードしてきた馬氏はそれまで政治と一定の距離を置く発言を繰り返してきたためだ。

ただし、アリババが急成長し、馬氏が中国財界を代表する存在となってからは政治的な行動が目立っていたのも事実だ。17年1月には米大統領に就任直前のトランプ氏と会い、米国内での雇用拡大を表明している。人民日報の報道は党と馬氏の強固な関係をアピールする狙いがあったとみられる。

党との深いつながりは企業経営上の利点が多い一方で、「経営に党・政府の意向が働いているのではないか」と色眼鏡で見られるリスクにもさらされる。馬氏自身、党員公表を必ずしも望んでいたわけでは
なさそうだ。馬氏は今年9月10日、55歳の若さで会長職を退任し経営の第一線から身を引いた。背景の一つに「政治」への疲れがあったのかもしれない。

中国でビジネスをする限り、党と無関係ではいられない。しかし、その距離感が難しい。アリババと並ぶ中国を代表する民間企業である通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)も中国政府との近さを疑われ、トランプ政権から制裁を課される結果を招いた。党とどう向き合うのか。国内外の企業は大きな「宿題」を抱えている。(中国総局 2019年10月)