突然の中断表明の影響 ニューデリー・松井聡

デリー松井

アフガニスタンで和平が実現するとすれば、大きく二つの道しかないだろう。一つはタリバンを取り込んで政治体制を作る。二つ目は武力でタリバンを排除することだ。だが後者が無理なことは、2001年の米英軍の攻撃にも関わらずタリバンが生き残り、復活したことで既に証明された。だとすれば残された道はタリバンと対話し、彼らをできるだけ穏健な形で政治体制に組み込むしかないのではないか。一方、タリバンへの不信感は根強く、ここにこの問題の難しさがある。ただタリバンと対話しない限り、タリバンが支配地域を広げ、市民の犠牲が増え続けることも間違いない。

トランプ米大統領の頭の中では、来年の米大統領選を見据え、「アフガンの和平と安定」よりも「米軍撤収」の方がウェートが大きいのだろう。それでも、タリバンと話をつけようとした姿は否定すべきではないと思う。なぜなら上述したように、さまざまな問題はあったとしても、タリバンとの協議が和平への唯一の道だからだ。両者の合意案にアフガン政府は含まれておらず、「将来の和平が担保されていない」という批判は正しいと思うし、私も前回の本欄で同様の趣旨のことを書いた。だがタリバンがこれ以上大幅に譲歩するのは難しく、米側交渉責任者のハリルザド・アフガン和平担当特別代表はできる限りのことをしたとも思う。今はひとまず両者が合意し、その後国際社会が、和平が軌道に乗るよう深く関与していくしか方法はないのではないか。

だがトランプ氏は9月7日、合意寸前だった協議を中断すると表明。理由はさまざまな推測があるが、はっきりしているのは米軍がタリバンとの合意なしで撤収を進めた場合、間違いなく大混乱に陥るということだ。アフガン国軍が崩壊する可能性すらある。結局は、米側は撤収する場合、どこかの時点でタリバンと交渉せざるを得ない。では、トランプ氏は今回の中断表明のどこに「落としどころ」や「出口」を見いだしているのだろうか。タリバンは「譲歩した」と受け取られる行動は絶対に避けるはずで、トランプ氏の中断表明後に大幅に歩み寄ることは考えづらい。残念ながら現時点ではトランプ氏の中断表明は事態をより一層混乱させ、和平プロセスを遅らせたとしか思えない。(ニューデリー支局 2019年10月)