不透明なパプア情勢 ジャカルタ・武内彩

ジャカルタ武内

インドネシア東端のパプア、西パプア両州で8月19日から反政府デモが断続的に起きている。住民らデモ隊と治安部隊の間で武力衝突に発展して双方に死傷者が出たが、3週間たった9月9日現在も不安定な情勢だ。政府は沈静化に躍起で、現地のネット通信を制限し、3日にはメディアを含めた外国人の立ち入りを禁止。情報を英語で発信してきた人権派の弁護士に対して民族憎悪を助長したとして容疑者認定し、国内外から批判を受けている。

騒動の発端となったのは、東ジャワ州スラバヤで8月17日、治安当局者がパプア出身学生らを「サル」と蔑称で呼んだことだ。前日からソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)にインドネシア国旗が側溝に落ちた動画が出回り、パプア出身学生らによる国旗の侮辱行為だとの批判が高まっていた。住民らが学生寮の前に集結する事態となった。学生らは容疑を否認し、差別行為を非難。一連の騒動に対する抗議の声がパプア、西パプア両州で高まり、大規模なデモに発展した。

両州では独立運動が長年にわたり続いてきたが、今回の抗議デモも途中から政治運動の様相が強まった。独立派組織「西パプア統一自由運動」(ULMWP)のマルクス・ハルク氏によると、デモ隊は掲揚が禁止されている独立派のパプア旗を掲げ、独立の是非を問う住民投票の実施を求めているという。一方、政府は両州に国軍部隊を増派した。

多民族国家として「多様性の中の統一」をモットーに掲げるインドネシアは、分離独立運動に敏感だ。1976年に併合した東ティモールは99年8月の住民投票で独立の道を選び、北部アチェ州では政府との激しい対立を経て、自治政府を樹立した。ジャカルタを拠点にする人権監視団体「インパーシャル」のバタラ・イブヌ・レザ氏は「政府は問題を根本から解決するという意志を持ってパプアと対話すべきだ」と強調する。

バチェレ国連人権高等弁務官は9月4日、死傷者が出ている状況に懸念を示す声明を発表し、「ネット通信の規制は表現の自由に違反する可能性がある」と指摘した。政府が情報統制をはかろうとする時こそ、国際社会が関心を持つ意味は大きい。(ジャカルタ支局 2019年10月))