「撤収合意」か「和平合意」か ニューデリー・松井聡

デリー松井

アフガニスタンからの米軍撤収に向けてトランプ米政権と旧支配勢力タリバンとの協議が大詰めを迎えている。米側は協議が「撤収合意」を目指すものではなく、あくまで「和平合意」を目指すものだと強調する。「和平合意」を大統領選に向けた成果としたい考えがあるとみられる。では、原稿執筆時点(8月14日)で、その「合意」がどこに向かっているのか考えてみたい。

協議の焦点となっているのは、米軍の撤収開始時期や撤収にかける期間、その方法についてだ。タリバンのシャヒーン報道官は7月初めの取材に「米軍撤収に関すること以外は、ささいな違いが残るだけだ」と語った。タリバン幹部によると、当初タリバンは5~6カ月以内の撤収を要求し、米側は18カ月~2年程度を主張。ただタリバンの事実上の広報メディアの記者は「時期については、タリバンは歩み寄る用意がある。米側の主張にかなり近いような時期で決着するのではないか」と見る。米側は現在駐留する約1万4000人以上を一度に撤収させるのではなく、段階的に撤収させることを目指しているとみられる。

また米側は撤収の条件として、アフガンでのテロ組織の活動を許さないことに加え、タリバンに対し、アフガン政府との直接交渉開始と、包括的な停戦を求めてきた。一方、タリバンはテロ組織の活動を許さないことを合意に含めることは了承したが、残る2点については反対している。タリバンの交渉チームを率いるスタネクザイ氏は7月初めの毎日新聞とのインタビューで「米側との合意後、アフガン政府とは他の政治家や活動家を交えた当事者間対話の中で話し合いをする。停戦についても合意後に当事者間対話の中で協議する」との方針を明かした。合意文書の中には当事者間対話への言及はあるだろうが、正式な停戦までは踏み込めないのではないか。「双方が戦闘行為を削減する」という妥協的な項目を盛り込むことが現実的だろう。

現時点での取材を総合すると、当事者間対話で停戦などの重要項目が決定される可能性が高い。そうなった場合、米国とタリバンの「合意」は、その後の「和平」を保証するものではないのではないか。和平への道のりはまだ見通せそうもない。(ニューデリー支局 2019年9月)