遠征の難きを怕れず 北京・浦松丈二

北京浦松 「新長征、再出発」。避暑の時期も近いというのに、中国メディアが熱いスローガンを流し始めた。「長征」は中国人にとって「試練」と同義語だ。中国は米国との持久戦を戦い抜く覚悟を固めたのだろう。

長征とは、1934年10月、国民党に包囲され、壊滅の危機に瀕した中国共産党軍(紅軍)が江西省から行った2万5000里(1万2500キロ)の長距離行軍だ。国民党の追撃や内部分裂などで陝西省に到達した1年後には10万人だった主力部隊が1万人以下になっていたという。

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江西省于都県にある長征出発記念館を参観する習近平氏=2019年5月20日、新華社

今は長征以来の危機だというのだ。習近平国家主席は5月20日、米中通商協議の交渉責任者である劉鶴副首相らを伴い、江西省于都県の「長征出発記念館」を視察して談話を発表した。

「我々は社会主義現代化国家の建設を始動させる新たな征途を歩み始めた。過去を受け継ぎ、未来を
切り開き、我々は再出発しなければならない」

国共内戦、抗日戦争、文化大革命、改革・開放と続く中国現代史は激動そのものだ。「これからは国家の存亡をかけた米国との持久戦だ。犠牲を覚悟してほしい」という号令なのだ。

実質的には大敗走だった長征だが、その長征によって中国共産党は徹底的に鍛えられた。毛沢東へのインタビューを下敷きにしたエドガー・スノーの「中国の赤い星」は長征をこう評する。〈共産主義者たちは、抗日戦線に向かって前進しているのだと自らを正当化し、そして事実そう信じていたようである〉〈これはこの歴史的移住を成功裡に終わらせた原因の大半をなすものであった〉

長征の途中、毛沢東は王明ら留ソ派に奪われていた実権を奪回し、実質的に党の最高指導者となった。紅軍は通過した地域で、地主の財産を農民に分配し、革命や抗日を説いて庶民の支持を集めることに成功した。スノーは〈この集団移住は、史上最大の武装宣伝旅行であった〉と喝破している。

米国との持久戦は始まったばかりだ。内外から支持されるか。党内は動揺しないか。毛沢東は長征を「紅軍は遠征の難きを怕(おそ)れず」と漢詩に詠んだ。文学少年だった習氏は毛沢東の漢詩を口ずさ
んでいるに違いない。(中国総局 2019年7月)