杭州 あこがれの家 上海・工藤 哲
中国人は将来、どんな家に住みたいと想像しているのだろう。そんなイメージや願望を形にしたのが、浙江省杭州市にあるパナソニックの製造工場に建てられていた「憧れハウス」だ。今年、現地でメディアに公開された。
モダンな空間のリビングに入ると、本などが置かれた棚の前に透明な板が置かれていた。ここからテレビの画面が映し出される。テレビを目立たなくし、シンプルさを追求した薄型の「透明テレビ」は今、中国で注目の的だ。
台所周辺の冷蔵庫はインターネットに接続され、タッチパネル式。帰宅後にスマートフォンのアプリ
でメニューを調整し、セットで食材を購入。材料が届くと、ボタンで圧力鍋などを操作し、20分後には
食事ができあがる。台所には肉を焼いたり、190度まで上がる食材を蒸す機器も備えつけられたりし
て、日々の料理の負担が大きく軽減されるという。中国ではフードデリバリーサービスが盛んだが、自宅で料理すれば質もより安心だ。
トイレも進化している。「健康一体型」を目指し、便座に座って用をたすと、センサーが肌から体の状態を感知し、体脂肪を分析。尿検査もでき、結果のデータが正面の鏡などに表示される。「毎日の健康の数値がタイムリーに把握できます。家の人が一緒に使えるように、それぞれを指紋で識別します。こうした設備は高齢者施設でも応用できます」と担当の太田貴紀課長は説明する。

女性の寝室にある鏡は、顔認証機能を備える。美しさを追い求める「白雪姫の鏡」をイメージし、顔を向けると肌の状態を瞬時に分析。画面で「しみ」「しわ」「毛穴」「透明感」「ほうれい線」の五つの今日の状態をグラフで伝えていた。
「憧れハウス」は、日本から一部を仕入れて研究を重ねた「中国オリジナル」だ。「パナソニックの家電の中国の占有率は2%未満。かつては20%だったが、中国の家電市場の拡大で今はその10分の1だ。
中国での競争は激しく、変わらなければならない。業界の動きを見ながら中国風のやり方で発展させて
いく」。呉亮総経理はこう語る。
中国で独自の発展を遂げる夢の家。5年後、10年後の変化にも注目したい。(上海支局 2019年7月)
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