移民問題 中道政党による規制がカギ ロンドン・服部正法

外信部デスク 服部正法

欧州における「ポピュリズム(大衆迎合主義)」政党や極右勢力の台頭の要因としてしばしば挙げられるのが、増加する移民や難民への悪感情だ。英国の欧州連合(EU)離脱問題でも、離脱派を動かした要素として指摘される。

シリア内戦などの惨状を逃れてきた人々を国際社会が受け入れるのは人道的に当然だし、EU加盟国の人々が、国境を超えてEU内を移動するのも保障されている権利だ。しかし、急激で大量の外国人の流入は移動先の地域でハレーションを起こす場合があり、ひどい場合はゼノフォビア(外国人嫌悪)や
ヘイトクライム(憎悪犯罪)を誘引し得るのも事実だ。

移民・難民の流入制限を求める人々は、政権を担う既存政党に不満を募らせ、そういった市民の受け皿として、移民排斥を唱えるポピュリズム政党や極右が勢いづく――こんな構図が、各国で散見される。

ではどうしたら良いのか。移民問題と政治の関係に詳しいロンドン大のエリック・カウフマン教授は、中道政党が移民流入の適切な管理に取り組むことで、ポピュリズム拡大は防げると見る。

この指摘に当てはまりそうな例がデンマークだ。厳しい移民政策を打ち出した中道左派の社会民主党が6月の総選挙で勝利した。「反移民」政党の協力も得て政権運営してきた中道右派から政権を奪還する見通しだ。社民党の移民問題担当報道官は、英紙フィナンシャル・タイムズに「極右だけがこの問題
を語るのであれば、人々は極右にのみ解決策を探すことになる」と述べた。この報道官自身、父はエチ
オピア移民という。

社民党に対しては「変節」といった批判もあるだろう。また、その政策の中味に非人道的な部分があれば批判されるべきだ。しかし、この政策転換の影響もあってか、反移民政党は最近約20年で議席数が最低に落ち込んだ。

責任ある中道政党が支援の必要な難民に人道的な対応を取りつつ、そうではない人々の流入には一定の制限を設けることで人心の不安が薄らぎ、移民排斥や差別的な主張を展開する勢力の抑制や衰退につながるなら、その意味は小さくない。現段階での評価は時期尚早ではあるが、社民党の転換がデンマークに何をもたらすか注目だ。(欧州総局、2019年7月)