インドネシア大統領選後の混乱 ジャカルタ・武内 彩

ジャカルタ武内

インドネシア選挙管理委員会が5月21日未明、前月に行われた大統領選でジョコ大統領が再選したと正式に発表した。直後から、結果を受け入れない野党候補プラボウォ陣営の支持者らによる抗議デモが本格化し、同日夜には警官隊との間で武力衝突に発展した。暴動は翌日も続き、火炎瓶や催涙弾などの応酬で、少なくとも9人が死亡、数百人が負傷した。地元メディアは、30年以上続いたスハルト独裁政権が倒れるきっかけになった「1998年の民衆暴動以来」と報じた。

開票作業が始まった当初から各種世論調査により結果は明らかだったが、混乱を避けるために正式発表を待っていたジョコ氏が21日、改めて勝利を宣言。一方、プラボウォ氏は「選挙に不正があった」として結果を受け入れず、陣営幹部は「ピープルパワー」という言葉まで持ち出し、民衆を動員して抗議すると脅した。選管や総選挙監視庁の建物前には発表直後から支持者が集結し始め、周辺の道路が封鎖されるなど市民生活は混乱した。ちょうどラマダン(イスラム暦の断食月)も重なっていた。

 

路上礼拝
総選挙監視庁前の路上でイスラム教の礼拝をするデモ参加者ら=ジャカルタで2
019年5月21日午後7時30分、武内彩撮影

21日夕、毎日新聞ジャカルタ支局から約50メートル離れた総選挙監視庁前では、警官隊と支持者がに
らみ合いを中断し、路上で日没後の食事と礼拝を行っていた。白い装束に身を包んだイスラム強硬派
団体の姿もあり、支持者が大通りを埋め尽くす異様な光景だったが、ここまでは状況は落ち着いていた。武力衝突は礼拝後、警官隊が支持者の排除に動いて始まった。一部の支持者が火炎瓶や石を投げて抵抗し、路上の車に放火するなど暴徒化。警官隊は催涙弾や放水車などで対抗した。

警官隊
抗議デモに備えて待機する警官隊=ジャカルタで同月22日午前8時
20分、武内撮影

プラボウォ氏は22日午後に「警官や兵士による暴力」を批判するコメントを発表したが、支持者にデモをやめるよう呼び掛けることはなかった。そして同日夜にも武力衝突は起きた。陣営は24日に憲法裁判所に選挙への異議を申し立てたが、審理の結果、証拠不十分として棄却された。

選挙は民主主義の根幹だと思ってきたが、それは選挙が国民の信頼の上に成り立っていることが前提
だと実感した。結果を拒否して暴力に訴えることは言語道断だが、不正を疑う余地を残す社会にも問題
はある。次回も同じことが起きかねない。(ジャカルタ支局、2019年7月)