国内初MRTに沸くジャカルタ ジャカルタ・武内彩

ジャカルタ武内

インドネシアの首都ジャカルタで、国内初の地下鉄部分を含む都市高速鉄道(MRT)が3月末に開業した。開業から2週間が過ぎても市民の話題の的で、週末は切符を買うのも困難なほどの盛況ぶりだ。移動手段というよりも、乗車することが目的の人が多い。駅前や構内で楽しそうにスマートフォンで撮影する家族連れやグループをよく見掛ける。MRTは日本の政府開発援助(ODA)を活用し、工事から車両、運営管理まで一貫して日本企業が関わった初めての鉄道事業だ。

開業したのは南北線の第1期区間で、市内中心部の南北約16キロを約30分で結ぶ。13駅のうち北端のブンダラン・ハーイー駅近くには、外国大使館やオフィスビル、外資系ホテルなどが建ち並ぶ。南端のルバク・ブルス駅周辺から中心部に通う通勤客にとって相当な時間短縮だ。北に延びる第2期区間の工事も着工し、将来的には東西線を整備する計画もある。鉄道通勤が市民生活に根付けば、世界一とも評される交通渋滞が緩和すると期待される。

「国内初」にまつわる開業前後の騒動もにぎやかだ。開業前に行った約2週間の試乗期間には、事前申し込みが必要にもかかわらず40万人以上が参加した。週末ともなると車内は日本の通勤電車並みに混雑し、身動きが取れないほどだったという。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に乗車体験の投稿が相次ぎ、マナー違反が発覚するきっかけにもなった。当初は鉄道に不慣れな乗客が多く、駅構内で車座になって食事したり、つり革にぶら下がってはしゃぐ様子などが拡散したりして激しい非難の対象になった。

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営業運転を始めた都市高速鉄道(MRT)=ジャカルタで2019年3月25日、
武内彩撮影

運営もあたふたしている。運賃設定はジャカルタ州議会での調整が混乱して開業日に間に合わず、急きょ無料運行期間を設けることに。その後も切符を購入しようとする乗客が詰め掛けて機能停止に陥った。ただ、今では飲食する人を見掛けることはなくなったし、ホームでは降りる人を優先するよう並ぶことが徹底されて快適に乗車できる。以前は「渋滞に巻き込まれたから遅れる」というのがジャカルタでの決まり文句だったが、渋滞に影響されず到着時間のめどが立つようにもなった。これで約束相手の遅刻がなくなる……のは期待し過ぎか。(ジャカルタ支局 2019年5月)

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武内撮影