「性的」を理由に人気曲の放送を禁止  ジャカルタ・武内彩

ジャカルタ武内

インドネシアの西ジャワ州で2月、米歌手のブルーノ・マーズさんや、英歌手のエド・シーランさんらの楽曲が放送禁止になった。理由は「歌詞内容がポルノ的で卑わいだから」というもの。対象の楽曲はブルーノ・マーズさんの「ザッツ・ワット・アイ・ライク」と「ヴェルサーチ・オン・ザ・フロア」やエド・シーランさんの「シェイプ・オブ・ユー」など世界中で人気のある17曲で、午後10時~午前3時の放送が制限される。

事実上の禁止令を出した西ジャワ州放送委員会は理由について、歌詞に女性を性の対象とする解釈ができる部分があり、ミュージックビデオがいかがわしいと判断したと説明した。ほかに対象となった米人気歌手アリアナ・グランデさんの「ラブ・ミー・ハーダー」は2014年に発表され、グランデさんがセクシーな黒いドレス姿で「息ができないくらい愛して、決して離さないで」と歌う。確かに扇情的ともいえる雰囲気はあるが、近年のミュージックビデオではよく見かける程度にも映る。

同委員会は州内のテレビ局やラジオ局に対し、対象曲を放送した場合は制裁措置を取ると通告。2曲が制限対象となったブルーノ・マーズさんは2月27日、ツイッターに「インドネシアで人気だったのに! エド・シーランの卑わいな歌詞のせいで一緒にピンチに陥った!」と冗談を交えて投稿。一方、エド・シーランさんは今年5月にジャカルタでコンサートを開催予定で、選曲に注目が集まりそうだ。

国民の9割近くがイスラム教徒のインドネシアでは、「性」に対する捉え方が日本に比べて保守的だと感じることがある。昨年末には韓国の女性アイドルグループがミニスカート姿で出演していたテレビコマーシャルが「過度に肌を露出し下品だから」と放送禁止になった。

ジャカルタの街中では、髪を覆うヒジャブを着けた女性を多く見掛けるが、服装はさまざまだ。体の線を隠すゆったりした服を好む人もいれば、流行の細身のジーンズ姿の女性もいる。それぞれ自ら選択し、心地良いと思える服装をしているのだろう。宗教的な規範は尊重されるべきだが、放送委員会などの当局が一方的に価値判断を押し付ける風潮には違和感を抱かずにはいられない。(ジャカルタ支局 2019年4月)