選択と自己主張が肝心 米国の入院事情 ロサンゼルス・長野宏美

ロサンゼルス長野 (2)昨年の大みそかにER(救急救命室)で処置を受ける体験をした。米国の救急車は有料で、カリフォルニアの平均搬送料は589ドル(約6万5000円)もする。病院の質もばらつきがあると思い、健康診断を受けている日系クリニックが開く時間を待って、配車サービスのウーバーで診察に向かった。

緊急の処置が必要で、近くのERに運ばれた。「大みそかのERって人員不足で信用できないのでは?」。クリニックの女性に聞くと、「専門医がそろっているので大丈夫だ」と心強い返事だった。

カーテンで仕切られた簡易ベッドの上で、さまざまな同意書にサインし、保険の情報や病歴などを記入。「早く処置して」と思っていると、中南米系の女性職員が「保険の確認が取れない」と言いに来た。国民皆保険の日本と違い、米国は加入する保険によって受けられる医療が違うと聞いたことがある。「まさか帰されるのか」と心配になった。

すると、スキンヘッドでこわもてのイラン系の医師が現れ、これから執刀するという。「えー怖い」。傍らのアジア系の男性看護師に弱音を吐くと、「あなたはラッキーだ。彼は最高の医師だ」と励ましてくれた。「毎回同じことを言っているのでは」と思ったが、信じるしかない。

無事に終わり、病室に運ばれた後、夕食を電話で注文するよう促された。カフェのようなメニューにはステーキやハンバーガーなどがずらりと並ぶ。せめて二択か三択にしてほしいと思いながらスープを頼むと、「デザートは? アイスクリームはいらないか」とすすめられた。

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入院中はたくさんの種類があるメニューから自分で注文した=米ロサンゼルス近郊で2019年1月1日、長野宏美撮影

翌日、日系クリニックの医師から「不安なら入院を延ばすよう主張した方がいい」と助言された。執刀医が2日で退院できると言うので入院延長を頼むと、「あなたは保険がないから高額が必要だ」と怖い顔で言われた。その後、保険の確認は取れたが、無保険者向け制度の案内も受けた。

テニス友達の医師も見舞いに来てくれ、「疑問や痛みがあれば担当医に必ず伝えること。なぜ何も言わなかったと言われる」と強調した。結局、医師の判断で4泊したが、受け身では何も進まない入院体験だった。(ロサンゼルス支局 2019年3月)