混迷するインドネシア大統領選  ジャカルタ・武内彩

ジャカルタ武内

インドネシアで4月17日、大統領選挙が行われる。再選を目指す現職のジョコ大統領とプラボウォ元陸軍戦略予備軍司令官との一騎打ちで、14年の前回選挙と同じ顔合わせとなった。当初は現職優勢の雰囲気が強かったが、ここにきて雲行き不透明という見方も出てきた。1月17日には最初の公開討論会が開かれ、法、人権、汚職、テロをテーマに大統領候補とそれぞれの副大統領候補の計4人が登壇した。

プラボウォ氏はスハルト政権時代に陸軍司令官として数々の人権侵害に関与した疑惑のある人物で、初回のテーマはジョコ氏に有利とみられていた。ところが、ジョコ派を公言していた知識層でさえ「ジョコ陣営の方が劣勢にうつった」と話すほど意外な結果となった。プラボウォ陣営は副大統領候補でクリーンなイメージがあるサンディアガ氏が「社会的弱者を守る。人権を優先させる」と強調し、プラボウォ氏に矛先が向くのを回避。一方で、治安当局が偏見に基づいて法を執行しているとジョコ政権を批判した。

そして翌日、ジョコ氏は反テロ法違反で服役中のイスラム過激派指導者、アブ・バカル・バシル容疑者(80)に恩赦を与えて釈放すると発表し、迷走を重ねた。バシル容疑者は、2002年に外国人を含む200人以上が犠牲になったバリ島爆弾テロ事件への関与が疑われた人物で、11年に過激派組織の軍事訓練を支援したとして禁錮15年を言い渡されていた。

突然の釈放宣言は、支持基盤が弱いとされるイスラム強硬派などの懐柔を狙った策とみられるが、従来の支持者を落胆させた。ジャカルタ・ポスト紙は23日朝刊でジョコ氏に再考を求める記事を掲載し、「もはや国内問題ではなく世界が懸念している。選挙で勝つことだけでなく、良心に耳を傾けて下さい」と呼び掛けた。結局、世論の高まりを考慮したのか釈放は実現しなかったが、法律を恣意的に利用しようとした姿勢に後味の悪さが残った。支持率の伸び悩みが指摘される中、疑心暗鬼に陥り、自らの足を引っ張っているように見えた。

前回選と同様、両候補に関するフェイクニュースや足を引っ張る内容のタブロイド紙も出回っている。投票日まで、まだまだ紆余曲折がありそうだ。(ジャカルタ支局 2019年3月)