ハード、ソフト両面でインフラ整備が急速に進み、日本企業にとってアジアで最もホットな「海外進出Elegent-Suites-Westlake-Lobby先」となったベトナム。日本人駐在員の暮らしも洗練されたものになりつつある。首都ハノイでは、中心部の西郊に新たな開発エリアも誕生。不動産価格が高騰した10年ほど前に比べれば、賃貸住宅の価格は7割程度に下落し、住まい探しは月額1000米ドル以下の比較的低価格な物件から、数千ドルの高額物件まで選択肢が広がっている。三井住友銀行ハノイ支店の金井暁子さんが、ハノイでの「駐在員の住まい選び」についてレポートする。

住宅エリア

ハノイで日本人がよく住む住宅エリアは、大きく4つに分けられる=地図A~D参照。
一つ目は、ハノイで最も大きい湖、西湖(タイ湖)の周辺のエリア=地図A。おしゃれなレストランやカフェなどが多く、西洋人をはじめとする外国人の人気が高い。シェラトン、インターコンチネンタルなどアジア進出ハノイ住宅マップ支援情報外資系の高級ホテルもある。

二つ目は、ハノイの中心部であるホアンキエム湖周辺とハイバーチュン通りのエリア=地図B。ホアンキエム湖は、地元住民の憩いの場であり、毎週金曜日の夜から日曜日にかけては、周辺が歩行者天国となり、多くの人で賑わう。旧市街、大教会、オペラハウスなどが位置する観光の中心地でもある。また、このエリアには政府系機関が多く、日系企業のオフィスも集まっている。
三つ目は、日本大使館が近く、日本食レストランが集まるキンマー通りエリア=地図C。キンマー通りとすぐ近くのリンラン通りには日本料理店が立ち並んでおり、日本人が多く集まる。日系のビジネスホテルなどもある。ちなみに、弊行ハノイ支店が入居するロッテセンターもこのエリア。
四つ目は、コウザイ通りなどを含む新興開発エリア=地図D。近年、開発が進んでいる。高速道路に乗やすく、近隣地域にアクセスしやすい。また、日本人学校がある。
また、この他に紅河(ホン河)の東のロンビエン・エリアには、日系ショッピング・モールのイオンがあり、買い物に便利だ。
ハノイには今のところ都市鉄道はなく(現在、建設中)、通勤は会社の車やタクシーを利用することが多い。朝8時台や夕方5時台など通勤ラッシュ時には、道が大変混雑する。
家族帯同の駐在員は、オフィスへの通勤に加えて、子供の通学も考えて住むエリアを考えることになるだろうが、インターナショナル・スクールや日系の幼稚園は、複数のエリアに散らばっている。また、外国人が利用しやすい医療機関も複数のエリアにある。

賃貸物件の種類と家賃相場

駐在員は、清掃やベッドメーキングなどが付いた「サービスアパートメント」を借りる場合が多い。サービスの内容は物件や契約によって異なるが、週に3~5回、部屋の掃除、ゴミ出しなどのハウスキーピングや洗濯などのサービスが含まれている。また、通常はベッド、テーブルなどの家具、テレビ、冷蔵庫など電化製品、さらに食器・調理器具類が部屋に備え付けてある。Wi-Fiルーターも設置されている。日本のテレビ番組が見られるが場合も多いが、契約による。また、朝食サービスがついているところもある。
ただし、一口にサービスアパートと言っても、実はいくつかの種類に分けられる。
まずは、ディベロッパーが所有・管理しているサービスアパート。いずれの物件も同一のオーナーとなり、管理・サービスが統一されている。名の知れた外資やビングループなど地場のディベロッパーのサービスアパートメントから、ノンブランドのサービスアパートメントまで様々あり、価格帯も広い。全体的に清潔で、セキュリティーの体制も整っている。大きなサービスアパートの建物には、フィットネスジムやプールなども入っている。間取りや不動産クラスによって価格は大きく異なるが、月額2000米ドル以上を目安にするとよい。3LDKで高級クラスとなれば、月額4000ドル以上するところもある。
次に、コンドミニアム(分譲マンション)のうち、個人オーナーが所有する物件。個人オーナー自らが貸し出す場合と、委託された管理会社が貸し出す場合があるが、同一のマンションでも管理者の違いにより、物件ごとに管理やサービス内容、内装が異なる。つまり、物件及びサービスの質は、個人オーナーあるいは管理会社次第となる。こちらも間取りやクラス、サービス内容によって価格帯は異なるが、大体、月額1000ドル以上で2LDKなら2500ドルまで、3LDKなら3000ドルまでが目安となる。

最後に、サービス付きのローカルアパート。建物全体をワンオーナーが管理しており、細長い建物で各階に1室というような小規模なアパートも多い。ファミリーよりは単身者向けだ。こちらも管理、サービス内容はオーナー次第。相場は、1LDK以上なら月額800ドル程度から。STUDIOタイプなら、500ドル前後でも見つかる。
日本の3分の1と言われる食品や日用品の物価に比べると、ベトナムの不動産価格は高めだが、不動産価格が高騰していた10年前と比べると7割程度の価格に下がっており、1000ドル以下の低価格帯の物件も探しやすくなったという。日系の不動産仲介会社は、「選択肢が増え、予算に応じて探すことができるようになった」と話す。
なお、家賃には、ハウスキーピングの料金、インターネット接続料金(Wi-Fi利用料金)のほか、水道料金が含まれているケースが一般的。

電気・水・インターネット事情など

以前は停電が少なくなかったハノイだが、現在はほとんどない。産業と家庭の電力需要が増大しているため、需給がひっ迫する可能性も懸念されているが、今のところは電力については特に心配する必要はないだろう。
水道水は飲むことはできないため、多くのサービスアパートではウォーターサーバーが設置されている。また、お湯は出るが、浴室に給湯タンクが個別についている物件が多く、一度に使えるお湯の量が限られている。
インターネットはハノイで広く普及しているが、海底ケーブルが切れるという事態が度々発生しており、切断されるとインターネット接続状況は不安定になる。
また、ハノイは湿度が非常に高いため、うっかりしていると、革製品や衣類、電子機器などにカビが生えてしまうことがある。そのため、除湿器を使うなど湿気対策をとらなければならない。加えて、残念ながら大気汚染も問題となっており、特に小さな子供がいる家庭では空気清浄機を使った方が安心だ。

契約と解除

1年間の契約が一般的で、修繕用に保証金として家賃の1カ月分を初回に求められることが多い。家賃の支払いは通常、3カ月の前払い。毎年、物価が上昇しているベトナムでは、契約の更新時にインフレ率に連動して家賃が見直される場合もある(2017年の消費者物価指数は、前年比3・53%上昇)。また、早期解約するとペナルティが発生することもあるので、契約時に確認が必要だ。
ハノイには、エイブル、スターツ、レオパレス21など日系の不動産仲介会社が進出し、日本人が駐在している。地場の仲介会社を利用したり、物件のオーナーと直接交渉したりすることもできるが、やはり最も安心できるとして、日系の不動産仲介会社に物件を紹介してもらう駐在員が多い。なお、ハノイ在住の日本人が増加するに伴い、最近では地場の不動産仲介会社でも日本人担当者や日本語を話せるベトナム人担当者がいるところがある。
ベトナムでは一般的に、借り手側が不動産仲介手数料を支払う必要はない。ただし、日系の不動産仲介会社の中には、入居後のサーポート契約としてサービス料金が発生するところもある。
日本とは異なり、賃借人を保護する法律がないベトナム。地場仲介会社がオーナーと結託して都合のいいように契約を進めたり、いざ入居すると家電製品が内覧時のものと変わっていたり、なんていうこともあるそうだ。もちろん、良心的な企業やオーナーもいるが、「何事も交渉次第」のベトナムでは、日本通りにはいかないこともあるので、契約内容などに細心の注意を払って、安心・快適な住まいを確保したい。【三井住友銀行ハノイ支店・金井暁子、写真はエイブルネットワークハノイ提供】

(2019年1月23日 )