インド総選挙への危険な戦略 ニューデリー・松井聡

デリー松井

来春に総選挙を控えるインドで、ヒンズー至上主義が再び台頭している。モディ首相の与党・インド人民党(BJP)の関連組織のヒンズー至上主義団体・民族奉仕団(RSS)や世界ヒンズー教会(VHP)が、1992年に破壊された北部アヨディヤのモスクの跡地にヒンズー教寺院の建設を求める運動をここに来て突如活発化させた。背景には、宗教問題をクローズアップさせることで、総選挙でBJPへの支持を拡大する狙いがありそうだ。

BJPは12月11日に開票された5州の州議会選挙で大敗。うち中部マディヤ・プラデシュ、西部ラジャスタン、中部チャティスガルの3州では、総選挙で政権を争う国民会議派に敗れた。燃料高騰などで借金に苦しむ農民の反発が影響したと見られている。さらに同10日には中央銀行のパテル総裁がモディ政権の干渉への不満から辞任を表明するなど、総選挙を前に逆風が強まっている。

そんな中、RSSやVHPが意識するのは、92年のアヨディヤのモスク破壊の一件がBJPの党勢拡大に貢献した一件だ。アヨディヤ問題に詳しく、BJPにも精通するデリー大のスマン・クマル准教授は「RSSはアヨディヤ問題を持ち出すことで、国民の目をモディ政権への批判から目をそらせようとしている」と指摘。「RSSもVHPも本気で政府に、アヨディヤにヒンズー寺院を建設させようとは思っていない。RSSが本当にやる気だったら、既にモディ首相にやらせている。RSSは単にこの問題を選挙の道具に使っているに過ぎない」と話す。

アヨディヤ問題について国民は非常に敏感だ。支局の運転手の男性は敬虔なヒンズー教徒だがイスラム教徒の友人も多くおり、「過激主義者」では全くない。だがアヨディヤ問題になると、話は別だ。モスクの跡地にラーマ(ヒンズー教の神の化身)寺院を建設すべきだと強硬に主張する。彼と話していると、アヨディヤ問題が「集票力」を持つことを実感させられる。

一方、この問題を持ち出すことは、ヒンズー教徒とイスラム教徒との対立をあおることでもある。RSSの戦略は、一歩間違えば危険な結果を生みかねない。(ニューデリー支局 2019年1月)