インドネシア大統領選挙と212集会 ジャカルタ・武内彩

ジャカルタ武内

ジャカルタ中心部にある独立記念塔「モナス」の広場が12月2日、大勢のイスラム教徒で埋め尽くされた。2016年12月2日にイスラム強硬派団体が、当時ジャカルタ特別州知事だったバスキ・プルナマ氏(通称アホック)がコーランを侮辱する発言をしたとして逮捕を求めた「212集会」の再結集だ。集会は早朝から始まり、警察発表によると約10万人が集まったという。

在インドネシア日本大使館は「モナス広場周辺には近付かないように」と注意喚起したが、参加者が暴徒化することはなく正午過ぎには解散した。

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212集会に参加するイスラム教徒で埋め尽くされた大通り=ジャカルタで20
18年12月2日、武内彩撮影

アホック氏は国内では少数派の中華系キリスト教徒で、ジョコ大統領が州知事だった時には副知事として支えた。反アホック騒動の真っただ中にあった17年4月の州知事選で負け、翌月に宗教冒とく罪で禁錮2年の有罪判決を受けて収監中だ。アホック氏を巡る騒動は社会を分断した。キリスト教徒の女性(43)は「州知事選では親しい友達でも意見を交わすのをためらう雰囲気があった」と振り返る。

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インドネシア国旗と聖句が描かれた旗を持って行進する212集会の参加者ら=
ジャカルタで18年12月2日、武内撮影

再集結はイスラム擁護集会の名目で開催されたが、内実は19年4月に実施される大統領選に出馬するプラボウォ元陸軍戦略予備軍司令官の応援集会の様相だった。プラボウォ氏が大歓声でステージに迎えられた一方、再選を目指すジョコ氏の姿はなかった。強硬派のリーダーから参加を拒否されたとされる。イスラム教徒でも穏健派のジョコ氏は「弱腰」に映るのかもしれない。インドネシアでは政治と宗教が密接に絡み合い、候補者も有権者も影響から逃れられない。

再集結を巡り、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上では意見の対立も起きた。元憲法裁判所長官のモハマド・マフッド氏は「再結集への参加は宗教的な指標にはならない」と否定的。ほかにも「政治的な側面を見るべきだ」「強硬派に利用されている」といった意見がある一方、「他の宗教にも配慮していた。一体感を得られる経験だった」という投稿もあり、互いに譲らない。果たして平穏に大統領選を迎えられるのか。先のキリスト教徒の女性は「ジャカルタ市民は州知事選の行き過ぎた熱狂に懲りた。大統領選では冷静に行動すると思う」と期待する。(ジャカルタ支局 2019年1月)