「米国第一主義」に変調なし ワシントン・会川晴之
トランプ米政権の信任を問う形になった中間選挙は、上院が共和党勝利、下院では民主党が与党に返り咲いた。選挙戦当初は、民主党圧勝を予想する声もあったが、共和党が終盤戦で巻き返した。結果に自信を深めたトランプ大統領は「米国第一」政策を従前にも増して推し進める可能性が高そうだ。
「ブルーウェーブの波が来た!」「トランプは2年後の大統領選に出馬できない!」。選挙戦から1週間ほどたったある日、ワシントンで開かれた民主党系団体の会合に顔を出すと、選挙戦「勝利」を訴える声が相次いで飛び出した。2年前、大統領選に敗れた直後の意気消沈した光景とは一転、民主党が元気を取り戻した感がある。
だが、物事は簡単に進まないのが世の常。内政に比べ外交・安保政策では大統領権限が強い。民主党が議会少数派に転落して以後は、大統領令を乱発する形で外交を進めたオバマ前政権の例にならい、トランプ流を色濃く打ち出す可能性が高い。
それを占う絶好の機会となったが、選挙直後のフランス訪問だった。トランプ氏は、アジア太平洋経
済協力会議(APEC)など一連のアジアでの会議への出席を見送り、11月11日にパリで開かれた第一
次世界大戦終結100周年記念式典などに参した。だが、マクロン仏大統領が主催する国際会議を欠席
するなど傍若無人な行動を続けた。
マクロン仏大統領は式典で「ナショナリズムは愛国主義とは正反対のものだ」と指摘、「『われわれの
利益を第一に』では、大切な道徳的価値観を失ってしまう」と訴えた。メルケル独首相も「第二次大戦
後に平和を支えてきた国家間のつながりを無視し、自国の利益を増進させようという風潮がある」と強
調するなど、両首脳とも強く批判した。
トランプ氏は就任後、地球温暖化対策の新たな枠組みである「パリ協定」や、2015年に米英仏独
中露がイランと結んだ核合意から一方的に離脱を宣言した。さらに昨年9月の国連総会で「多国間主義」よりも「愛国心」を優先する考えを強調している。米国の歴代政権が大切にしてきた同盟国との絆は、さらに軽視されるのか。国際社会は今後2年間、試練の時を迎えると考えてもよさそうだ。 (北米総局 2018年12月)
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