離脱のダブルパンチ ロンドン・矢野純一

ロンドン矢野米国のイランに対する経済制裁の発動で、英国内で暮らすイラン人もジワジワと影響を受けている。ロンドン市内にあるイランの食料品などを扱う雑貨店では、今年5月にトランプ米大統領が核合意からの離脱を発表して以降、イラン関連の商品が徐々に値上がりしている。

「トランプ氏は論外だが、経済を立て直すと約束していた我々の大統領も許せない」。雑貨店の男性店員(44)の怒りの矛先は、解決策を提示できないロウハニ大統領にも向かう。

英国家統計局によると英国に住むイラン出身者は推計約7万人。男性も2002年に英国内に住んで
いた親族を頼って英国に移住した。

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「欧州連合(EU)からの離脱と、米国の核合意離脱で先行きが見えない」と
話すイランからの食料品などを扱う雑貨店の店員=ロンドン市内で11月9日、
矢野純一撮影

欧米主要国とイランの15年の核合意で、制裁が解除されて以降、イランから輸入する商品の品数も増
えた。イラン国内に住む親族への送金も容易になった。電話で話す親族の口ぶりが、明るくなってきた
ように感じていた。

しかし、対イラン制裁の再発動で、状況は制裁下にあった15年以前に逆戻りした。商品を仕入れてい
る仲介業者は「イラン国内の業者との決済が今後、難しくなる」として、第一次制裁が発動された今年
8月以降、商品の価格を段階的に引き上げるようになった。

現地通貨リアルの価値も下落を続けている。イラン国内の闇両替では、トランプ氏が核合意からの離脱を発表する前と比べ、ドル換算で3分の1近く暴落した。

イラン国内の物価が高騰し、親族からは将来への不安から送金額を増やすように催促されているが、
送金も難しくなった。

手数料はかさむが、前回の制裁時と同様の「特別な方法」で送金を始めた。英国内の「業者」に現金
を渡し、イラン国内で親族が「業者」から現金を受け取る「地下銀行」を利用する。業者間で、どのよ
うにイランとの間で決済しているかは判らないが、今のところは、まだ送金できている。

「欧州連合(EU)からの離脱と、米国の核合意離脱。二つの離脱で、両方のほおを殴られているよ
うな感じだ」。男性店員は力なく話した。 (欧州総局 2018年12月)