テイラー効果 ロサンゼルス・長野宏美

ロサンゼルス長野 (2)果たして「テイラー効果はあるのか?」。11月6日に投開票された米中間選挙で、接戦が伝えられていた上院議員選挙の取材のため、南部テネシー州を訪れた。

州内で投票するという女性歌手のテイラー・スウィフトさん(28)が10月、1億人以上のフォロワーがいるインスタグラムで「民主党候補に入れる」と表明。若者の政治への関心が高まり、有権者登録が急増した。結果は共和党候補が勝ったが、投票に行った人は民主党と共和党の両方とも前回より増えた。

私は結果以外にも気になることがあった。米国ではスターが政治的な発言をするのは珍しくないが、
「保守派の人気を失うのではないか?」ということだ。彼女はもともと、保守派に人気のカントリー音
楽から出発している。政治的な発言を封印してきたこともあり、リベラルなポップスターのイメージと
は異なる。米国社会の二極化が進む今、ファンの「半分」を失うことにならないのか。

そこで、選挙2日前に州内であったトランプ大統領の集会に来た人に聞いてみた。「ハリウッドのバブルに生きるセレブはみんなリベラルだ。残念だが、驚きはない」。おおむね、このような反応だった。

ちょうどテイラーのファン層に重なる年齢のレイチェル・スミスさん(15)は「政治とは距離を置いてほしかったけど、彼女の音楽を嫌いにはならない」と語った。話の途中で母のモナさん(48)が半ば強引に娘
に同意を求めた。「でももう彼女の音楽を買わないわよね?」。レイチェルさんは母の勢いに押され、小さくうなずいたが、好きな曲が出たら買いそうな雰囲気だった。

そこで、モナさんに「民主党支持者のレディー・ガガをどう思う?」と聞くと、「大好き。新曲を買ったばかりよ」と興奮気味に明かした。娘に求めた対応と矛盾するが、政治性は関係なさそうだ。

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トランプ集会に並ぶ大勢の支持者ら=米南部テネシー州チャタヌーガで2018年11月4日、長野宏美撮影

多くのトランプ支持者が言っていたように、俳優や歌手はリベラルな人が多数派だ。ハリウッドでは冷戦初期、「赤狩り」の影響で言論弾圧を受けた暗い歴史もあり、スターがリベラルな発言をするのは驚きではない。一方、差別的な発言をするトランプ氏の登場以降、沈黙を続けるのは逆に「差別容認」ととられ、マイナスの方が大きいのだと思う。 (ロサンゼルス支局 2018年12月)