航空機事故 指摘されていた安全性への懸念 ジャカルタ・武内彩

ジャカルタ武内

インドネシアで10月29 日、乗員乗客189人が乗ったライオンエアJT610便(ジャカルタ発パンカルピナン行き)が墜落した。ジャカルタの北東沖の海中からは、フライトレコーダー(飛行記録装置)や乗客の荷物とともに遺体の一部も見つかり、これまでに90人以上の身元が確認された。被害者の多くが閉じ込められているとみられる機体の主要部分は発見されないまま、国家捜索救助隊などの捜索は打ち切られた。

墜落機は午前6時20分にスカルノハッタ国際空港を離陸した直後に機長が空港への引き返しを要求、その後に管制塔との通信が途絶えた。事故原因を調査している国家安全運輸安全委員会は11月7日、主翼が受ける気流の角度を測るセンサーと速度を表す対気速度計に不具合があったと明らかにした。コックピット内の会話などを記録するボイスレコーダーは未発見で、原因解明には時間がかかるとみられるが、当局の説明会で「なぜ自分の息子が犠牲になったのか」と声を張り上げていた父親の必死の問いかけに必ず答えを出して欲しい。

インドネシアは広大な国だ。国土は日本の約5倍、東西の距離は約5110㌔と米国の東西海岸間とほぼ同じで、世界最多の島しょ国でもある。そこで人々の移動に欠かせないのが航空機だ。主な航空会社はライオンエアなど格安航空会社(LCC)を含めて8社あり、低価格でへき地にも運航するLCCは欠かせない存在だ。LCCの登場で、スカルノハッタ国際空港の2017年の旅客数は00年から5倍以上の約6300万人に急増した。LCC大手の宣伝文句通り「今や誰もが飛べる」時代だ。

一方で事故や重大インシデントの多さも指摘されてきた。多数の死者を伴う墜落事故は05年以降、今回を含めて少なくとも4件あり、ライオンエアは04年と13年に着陸に失敗し死傷者を出している。安全性への懸念から、欧州連合(EU)は16年まで同社を含むインドネシアの複数の航空会社に対し、域内への乗り入れを禁止していたほどだ。

事故後、ブディ運輸相はLCCの過当競争が安全性に影響しているとして運賃見直しに言及した。本来、利便性と安全はてんびんにかけるものではない。(ジャカルタ支局 2018年12月)

IMG_2641
大勢の乗客が利用する格安航空会社(LCC)のカウンター=ジャカルタのスカ
ルノハッタ国際空港で2018年11月12日午前5時半ごろ、武内彩撮影