行方不明 北京・浦松丈二

 

北京浦松中国人として初めて国際刑事警察機構(ICPO)トップになった孟宏偉総裁(64)が行方不明になった。ICPO本部があるフランスからの一報に接した時、一瞬、冷たい汗が背中をつたった気がした。中国当局は3日後に賄賂を受け取った収賄などの容疑で調査中と発表した。中国が苦労してICPO総裁に送り込んだ孟氏を任期途中で拘束し、わざわざポストを失うリスクを冒したことになる。

2012年秋の発足以来、威信をかけて反腐敗闘争を続ける習近平指導部にとって、海外に逃げた腐敗分子を追跡するためにICPOとの連携は不可欠だ。そのトップの総裁ポストは喉から手が出るほどほしかった「オセロゲームのコーナー」(北京外交筋)だった。

反腐敗闘争では、公安部門のトップだった周永康・元政治局常務委員=収賄罪などで無期懲役=が「大トラ」と呼ばれる最大のターゲットだった。孟氏は長く周氏の側近の公安次官だったにもかかわらず、摘発後も生き延び、沿岸警備を担う閣僚級の中国海警局長に昇格するなど引き続き重用されていく。中国人初のICPOトップに送り込まれたことも指導部からの信任の厚さを物語る。

気になるのは、孟氏の失踪直後から、フランス政府が妻子を保護し、中国政府に事情を問い合わせるなど中仏関係がぎくしゃくし始めたことだ。米国との対立がエスカレートしてきた。欧州の主要国、国連常任理事国、友好国であるフランスとまで対立する事態は何としても避けたいはずだ。

現時点では、孟氏が「失踪」するまでの情報戦や水面下の外交交渉を検証することは難しい。少なくとも中国はフランスとの摩擦を覚悟して孟氏を拘束したのは間違いないだろう。

また、尖閣問題も担当する中国海警局トップ経験者、14年間も公安次官を続けてきた孟氏の汚職調査は、習指導部の看板政策、反腐敗闘争が最前線から腐っていたことを証明してしまう。

一体何があったのか。孟氏が中国要人の機密を外国政府に漏らしたことが発覚し、拘束されたとの情報もある。現時点では収賄事件。この発表を信じる人は少ないだろう。(中国総局 2018年11月)