日本語教育 バンコク・西脇真一

 

バンコク西脇「日本語学科は存廃の危機にある」。2013年春までいたソウルで、韓国の大学の日本人教員に言われて驚いた。当時の李明博政権は、大学全入時代に備え「就職率」など
を目安に学校の統廃合に乗り出していた。大学は自衛策として学科の見直しに着手。中国語に人気を奪われ、日本語学科もその対象なのだと言っていた。実際、国際交流基金による15年の調査では、韓国の日本語学習者は約55万6000人と、前回の12年調査から3割以上減った。教育課程の改定が理由に挙がるが、中国語へのシフトも大きいとみられる。

一方、日本人や日系企業の多いタイでは、約17万4000人と逆に3割以上増えた。ただ、15年のタイ教育省基礎教育局の調べでは、同局傘下の公立中等教育機関で日本語を学ぶのは約8万7000人。これに対し、中国語は約60万9000人に上る。そうした状況の中で、タイ人の日本語教師をネイティブ・スピーカーとして支えているのが「日本語パートナーズ」だ。

アジア各国の中等教育機関へ同基金から派遣された人たちで、2014~17年度は「20~69歳」「日本国籍者」などの条件・選考をクリアした1225人が、12カ国・地域で活動した。現在タイでは10カ月の任期で80人が全土に配置されている。日本語学習支援はパブリック・ディプロマシーの側面もあるが、同基金の吉岡憲彦さんは「帰国後、体験を話してほしい。今も東南アジアに先入観を持つ人は多いので」と話す。

大学3年の山本南々子さん(21)は、南部ナコンシータマラート県の学校に赴任。年の近い生徒に囲まれ楽しそうだが、悩みも深い。日本語学科とはいえ、第1志望ではない生徒は多く「どうやる気を出させるか、本気でやりたい生徒との兼ね合いをどうするか…」。山本さんは地域で唯一の日本人。生徒や地元の人には、日本や日本語に関心を深める「窓」のような存在でもある。やり方に正解はなく、大いに試行錯誤してほしい。

ところで、最近の様子を韓国の大学幹部である知人に尋ねると、こんな答えが返ってきた。「対中関係の悪化に加え、日本での就職を目指す学生なども増え、人気は戻りつつあるよ」(アジア総局 2018年11月)