浮き彫りになったタリバンの「実力」 ニューデリー・松井聡

 

デリー松井

アフガニスタン南部カンダハル州で10月18日、治安対策の会議が行われていた知事公舎が旧支配勢力タリバンに襲撃され、ラザック州警察長官が殺害された。駐留米軍トップのミラー司令官も会議には同席していたものの、一足早く現場を離れていたため助かった。8年ぶりに実施される下院選の2日前に起きた事件だけに、アフガン政府だけでなく、政府の後ろ盾のトランプ米政権が受けた衝撃は大きい。

ガニ大統領は延期が繰り返されてきた下院選を実施し、統治能力を国内外に示し、来年の4月の大統領選に弾みを付けたい考えだ。国連や米国も選挙の実施を賞賛することで、アフガンの自立を強調したい思惑がのぞく。だが下院選ではテロで多数が死傷した。浮き彫りになったのは、ガニ氏の統治能力ではなく、タリバンの「実力」だ。もはや将来のアフガンを考える時、タリバンの存在は無視できない。トランプ政権が7月にタリバンとの直接会談に舵を切ったのもこの事実を認めているからだ。

だが、両者の会談は一筋縄ではいかない。タリバン関係者によると、タリバンは米国に、短期的には①指導部への国連制裁解除②カタール事務所の承認③アフガン政府が拘束する捕虜の釈放――を要求し、長期的には無条件のアフガンからの撤退を求めている。一方、外交筋によると、米国には二つの思惑があるとみられている。「戦闘に勝利したと見せる形での大部分の撤退」と、ロシアやイランの影響力拡大を警戒し「少しでも駐留米軍を残す」ことだ。

直接会談は現時点では「非公式」で行われており、双方とも「公式」に格上げすることに前向きだ。だが「公式」になったとしても、交渉は難航するだろう。

その場合、しびれを切らしたトランプ政権による「民間軍事会社」への委託も現実味を帯びてくるかもしれない。マティス米国防長官はアフガンへの関与の重要性を強調しているが、取りざたされているように政権からいなくなった場合、民間委託がないとも言い切れない。民間への委託が行われれば、戦況はさらに泥沼化するだろう。常識的に考えれば、あり得ない選択肢だが、これまでのトランプ政権を見ていると、そんなシナリオも考えざるを得ない。(ニューデリー支局 2018年11月)

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