祭りのような選挙集会 台北・福岡静哉
台湾が選挙の季節を迎えた。4年に一度の統一地方選(11月24日投開票)は8月31日までに届け出が終わり、候補者らの運動が本格化した。台湾の選挙集会は日本とは異なり、まるで祭りのようだ。
台北市であった与党・民進党の集会を取材した。党本部前の道路に屋外ステージが設置され、道路は支持者らで埋まっていた。焼き鳥や肉まんなどを売る出店や屋台が並ぶ。司会の呉思瑤・立法委員(国会議員)が「まずは皆さんに若者の活躍を見て頂きましょう」と叫ぶと、ステージ前に椅子が高く積み上げられた。そこへ若い男性が器用な身のこなしで頂上まで上がり、まるで消防署の出初め式のような曲芸を披露した。

手喝采を浴びていた=台北市で福岡静哉撮影
積み上げられた椅子の真下には、伝説の台湾独立運動家、史明氏(99)が車椅子に乗って見物している。椅子が史明氏の上に崩れ落ちたらどうなることかと内心、はらはらした。そんな私の心配をよそに、会場からは拍手の渦がわき起こる。続いて若者らはステージ上でヒップホップのリズムに乗って軽快なダンスを披露した。飲み物や焼き鳥を手にした支持者らは「いいねえ!」と叫びながら合いの手を入れる。会場の熱気が最高潮に達したところで候補者が現れ、激しい口調で支持を呼び掛けた。
このように台湾の選挙集会はたいてい、オープニングで会場を盛り上げる演出がある。歌手が登場したり、バイオリン演奏があったりなど多種多様だ。
縁起かつぎも個性的だ。選挙の出陣式などでは候補者がパイナップルや大根を手に登場することがよくある。パイナップルの台湾語「オンライ」は「運がさらに良くなる」、大根の台湾語「ツァイタオ」は「縁起がいい」という同音異議語があるためだ。
届け出順を決めるくじ引きでは他の候補者より目立とうと、仮装して現れる候補者がいる。スーパーマンやサンタクロース、中国古代の衣装など趣向を凝らしたコスプレ姿がマスコミをにぎわせる。
統一地方選は県や市の首長や議員の他、さらに小さな行政区である村、里など九つの選挙が同時に実施される。このため「九合一」と呼ばれ、約1万1000人が選出される。台湾じゅうが選挙一色となり、投票日までお祭り騒ぎは続く。(台北支局 2018年10月)
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