極右政党の躍進と優生保護思想 ロンドン・矢野純一

 

ロンドン矢野スウェーデンで総選挙が9月9日、行われた。反移民を掲げる極右政党・民主党が前回2014年の獲得議席から13議席を伸ばし、62議席を獲得した。得票率は17・6%と前回より4・7ポイント伸ばした。

取材をしていて、今年初めに同国の優生保護法の歴史について説明してくれたストックホルム大学のルンシス准教授(歴史学)の言葉を思い出した。移民排斥を主張する民主党と、優生保護思想が受け入れられた共通点について指摘し、「優生保護の発想は今も社会に残っている」と話していた。

同国では優秀な子孫を残す優生思想に基づき、1935年から75年までの間、法律に基づく強制的な不妊手術が行われていた。地元紙の記者が97年に告発して、政府はようやく補償に乗り出した。ルンシス氏は告発記事の基となる研究を行っていた。

「ナショナリズムも優生保護も、多様性を認めない。異質な者を支援する予算はないため排除するという論理も同じだ」と話し、民主党の支持層拡大にスウェーデン社会に潜み続ける問題を嘆いていた。

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優生保護と極右の共通点について話すストックホルム大学のルンシス准教授(歴史学)=ストックホルム大で矢野撮影

民主党は88年に結党したナショナリズム政党で、メンバーにはネオナチの党員もいた。

同年の選挙では約1118票しか獲得できなかった。しかし、05年に現党首のオーケソン氏が25歳の若さで党首に就任。ソフトなイメージを打ち出し、10年には20議席、14年には49議席と党勢を拡大してきた。

移民をスウェーデンの伝統や文化を乱す存在と位置づけ、「人種差別ではなく、国の文化を守るため」という説明は国民の同党への抵抗感を和らげた。選挙戦では「福祉予算が移民対策に回されている」と政権を非難。その主張は優生思想とそのまま重なる。

欧州各国で極右政党が勢力を伸ばしている。欧州連合(EU)内では、昨年12月にオーストリア、今年6月にイタリアで極右政党が加わった連立政権が誕生した。来年5月の欧州議会選挙に向けて米トランプ大統領のバノン前首席戦略官が反EUの右派勢力を結集する動きをみせている。欧州に吹き荒れる極右の風は当分、やみそうにない。(欧州総局 2018年10月)