「女王」交代 ロサンゼルス・長野宏美

 

ロサンゼルス長野 (2)長年君臨した「女王」が交代する瞬間を目の当たりにしたと感じた。9月8日にニューヨークであったテニスの全米オープン女子決勝を生で観戦した。

大坂なおみ(20)は4大大会で初の決勝進出。対するセリーナ・ウィリアムズ(36)は4大大会のシングルスで史上最多タイの24回目の制覇を狙っていた。彼女は昨年9月に出産し、母として初の全米優勝もかかっていた。ウィリアムズの勝利を望む観客が多数を占める中、硬くなっても不思議ではない大舞台で、大坂はウィリアムズをパワー、スピード、精神力のすべてで圧倒した。

私は記者になる前の1990年代に選手として全米オープンに出たことがある。全豪、全仏、ウィンブルドン、全米の4大大会はそれぞれ開催国や文化の違いから特徴がある。伝統と格式があるウィンブルドンは厳かな雰囲気で、例えるならクラシックコンサートだ。一方、全米はにぎやかで観客もわりと自由に応援する。初めて会場を訪れた時は「ロックコンサートのようだ」と戸惑った。

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全米初優勝の翌日、恒例の写真撮影会でトロフィーを掲げる大坂なおみ
=ニューヨークで2018年9月9日、長野宏美撮影

「自由」な雰囲気とはいえ、表彰式の冒頭でのブーイングには衝撃を受けた。大坂に向けられたものではないが、テレビ番組のインタビューで彼女は「自分に向けられたと思った」と振り返った。

ウィリアムズはラケット破壊や暴言などでポイントやゲームを失うペナルティーを受けた。私はスタジアムで観戦していたが、暴言が聞こえず、彼女がなぜ3度目の違反で1ゲームを失ったのか、よく分からなかった。後で、テレビで彼女の言動を見て初めてあれほど行き過ぎた態度だったことを知った。ウィリアムズが優勝し、「歴史的瞬間」の目撃者になりたいと期待していた観客は、その経緯を把握できなかったこともあり、試合に水を差されたと感じたのだろう。

ここで1ゲームの罰を取られなくても大坂の勝利は揺るぎなかったと思う。これほど感情を制御できない時点で負けだ。この試合の主審は男女関わらず厳しいことで知られ、ウィリアムズの「女性差別だ」という主張には同意できない。彼女が決勝であれだけ怒りをむき出しにし、崩れたのは新世代台頭による女王陥落への抵抗だったと感じる。(ロサンゼルス支局、2018年10月)