「ハッカーニ・ネットワーク」とは ニューデリー・松井聡

 

デリー松井

内戦が続くアフガニスタンで「ハッカーニ・ネットワーク(ハッカーニ派)」と呼ばれる武装組織が注目を集めている。一般的には旧支配勢力タリバン内の「最強硬派」とされ、アフガンでの和平に反対しているとされる。またトランプ米政権のパキスタンへの強硬な圧力の背景には「パキスタン軍がハッカーニ派を支援している」という確信があり、米パ関係悪化の主たる要因でもある。

歴代米政権はハッカーニ派を「タリバンと協力関係にはあるが、別組織」ととらえてきた。ハッカーニ派が、タリバンがカブールを制圧した1996年にタリバンに加わった経緯があるためだ。国連安全保障理事会の制裁でも「ハッカーニ派」を一つの武装組織と認定し、これまでの米政府の発表でも「タリバンとハッカーニ派」などと区別してきた。

しかし、複数のタリバン関係者によると、現在はタリバンとハッカーニ派は完全に一体だという。ハッカーニ派の指導者とされるシラジュディン・ハッカーニ氏はタリバンのナンバー2で、タリバン内のすべての決定事項はシラジュディン氏の決済を得る必要がある。さらにシラジュディン氏は武闘派で多くの戦闘員から尊敬されており、同氏が事実上タリバンのトップとも言えるという。事実、シラジュディン氏も承認した6月のアフガン政府との3日間の停戦中、タリバンは政府への攻撃を完全に停止した。

最近、ハッカーニ派を巡り興味深い動きがあった。タリバンは9月4日、ハッカーニ派の創始者でシラジュディン氏の父ジャラルディン氏が死亡したと発表した。死亡日時は公表されなかった。だがタリバン 関係者によると、ジャラルディン氏は4年以上前に死亡していた。なぜこのタイミングでの発表だったのか。

タリバン関係者によると、タリバンは7月23日、カタールの首都ドーハで米国と初めて直接会談した。タリバンは米国との2度目の交渉に前向きで、対米闘争の象徴でもあったハッカーニ派の創始者の死亡発表は米国に対して「交渉をさらに進めたい」とのメッセージを送る狙いがあった。米国も交渉に前向きとみられ、和平に向け正念場を迎えつつある。(ニューデリー 2018年10月)