トラブル続く次世代型電車 ジャカルタ・武内彩

 

ジャカルタ武内

インドネシア・スマトラ島南部のパレンバンで8月、高架を走る次世代型電車(LRT)が本格開業した。国内初のLRTで、街の北部にある国際空港から終点まで全13駅(約24㌔)を約40分で結ぶ。途中、街の名所でもあるムシ川を渡り、同月開催されたアジア大会の競技場にもなった「ジャカバリン」を通る。人口約830万人の地方都市ながら渋滞は深刻で、市民からは渋滞緩和に役立つと期待される。

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国内初のLRT車両。3両編成で高架を走る=インドネシア・スマトラ島南
部パレンバンで2018年8月2日、武内彩撮影

地元自治体の事業責任者、スラント氏は「市民の利便性向上が大事で、利益を出すことは目的ではない」と話すが、公共交通が整えば地方都市でもビジネス面で強みになるという思惑もあるようだ。スラント氏は「国内初のLRTとして、きちんと並んで電車を待ったり、降りる客を先に通したり、優先座席を守るという文化を根付かせ、電車のある生活スタイルを全国に広めたい」と意気込む。

アジア大会の取材でパレンバンを訪れた8月2日、一部区間で運行を始めていたLRTに乗ってみた。終点の「DJKA駅」は、初めての電車を楽しみにしていた市民で大混雑していた。係員がいる窓口に並んで5000ルピア(約40円)の切符を購入し、自動改札を抜けてホーム階へ上ると、さらに大勢の人だかり。しばらくすると3両編成の真新しい電車が入ってきた。国営の鉄道車両製造会社「インダストリ・クレタ・アピ」製で、3両合わせて120席あり、定員は530人あまり。車内は日本の地下鉄車両などよりも狭く感じたが、空調も効いて快適だ。ビジョン広告用のモニターもある。

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初めてのLRTを楽しみにしていた市民で混雑するDJKA駅。自動改札を
通るにも行列が出来た=武内撮影

乗客らと意気揚々と記念撮影に応じていた運転士は「ジャカルタで研修も受けたし、一番に心がけるのは安全運行だね」と誇らしげに話していた。ところが、信号トラブルで約1時間の遅延。期待を裏切られて怒り出す人や、諦めて帰る人が続出した。LRTはその後も運行トラブルが続き、9月現在で稼働するのは7駅だけだ。

インドネシアでは、既に完成した部分だけで先に営業を始めてしまう「ソフトオープン」という言葉をよく耳にする。ホテルやショッピングモールならそれもいいが、交通機関は安全を確実にしたうえで、しっかりオープンして欲しい。(ジャカルタ支局 2018年10月)