五嶋龍さん 中国の10年 上海・工藤哲

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五嶋龍さん(30)と言えば、クラシック音楽の長寿番組「題名のない音楽会」で司会を務めた人気バイオリニストだ。6月に上海や江蘇省南京、無錫、蘇州でリサイタルを開いた。地方都市での演奏の様子を見ようと無錫に足を運んだ。

市内の大劇院。日本では知名度が高いので満員と予想していたが、上海などとは違い、空席もある。小学生くらいの子を連れた家族連れが目立つ。

中国の名曲「梁祝」やサン・サーンスのソナタの美しく力強い音色。だがホールでは気にかかる雑音が響く。せきや私語、スマートフォンの着信音だ。

だが五嶋さんはほとんど気にならない様子。リサイタルが終わるとロビーに姿を見せて椅子に座り、何十人もの子供達が手にするCDにサインし、一人ずつ握手していった。列をなして待っていた中国のファンは大喜びだ。

子供らが手にするCDケースにサインするバイオリニストの五嶋龍さん(左手前)=2018年6月17日、中国江蘇省の無錫大劇院で工
子供たちが手にするCDケースにサインする五嶋さん(左手前)=中国江蘇省の無錫大劇院で工藤撮影

五嶋さんに楽屋で話を聞いた。中国各地を訪れるようになって約10年になる。ほぼ毎年、また年に2、3度来ることもあるという。

各地での演奏を通じ、中国社会の変化を感じ取ってきた。始めたころは演奏中に聴衆がホールを歩き回ったり、飲食や写真撮影をしたりする人も珍しくなかった。当日に会場に行ってみたら、予定のオーケストラや指揮者が違っていたこともある。「その時と比べれば、今はだいぶ変わりましたね」

地方都市のコンサートホールが増え、聴衆のマナーは明らかに洗練されてきた。楽章間の拍手はしないのは暗黙の了解だが、これも以前より減った。

「中国の音楽には、実はあまりルールがないんです。音楽にありがちな『日本人だから』『西洋人だから』といった先入観にとらわれず、実は自分が思うように自由に弾けるんですよね」

日本や欧米とは異なる中国での出来事や聴衆の反応をむしろ楽しんでいるようだ。こうした経験が、五嶋さんの音楽の幅を広げているのだろう。

上海の街中では、ピアノやバイオリン教室の看板が目を引く。「自分の子には早くから一流の音楽に触れてほしい」。そう願う親は確実に増えている。演奏を待ち望む親子は中国各地にまだまだいる。五嶋さんの地道な取り組みに期待したい。(上海支局 2018年8月)

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