宇宙軍創設に踏み切る米国 ワシントン・会川晴之
ペンス米副大統領は8月9日、2020年までに宇宙軍を創設する構想を打ち出した。トランプ大統領が実現に力を注いでいるものだ。中国とロシアの両国が衛星攻撃兵器(ASAT)に注力するなど、米国の優位性が低下していることが創設の背景にある。トランプ政権は宇宙軍を、陸海空軍や海兵隊、沿岸警備隊に次ぐ6つ目の軍と位置づける考え。新たな軍の設立は1947年の空軍以来となる。
米国は、宇宙空間を「国防の屋台骨」(国防総省)と位置づける。早期警戒衛星で北朝鮮などの弾道ミサイルを監視・追跡するほか、GPS衛星で船舶や車両の航行を支援する。通信も衛星に頼るほか、写真撮影などの情報収集活動にも活用、さらに、精密誘導兵器の照準設定にも衛星を利用している。
一方、中露両国は米国の優位性を打破しようと、ASAT開発に注力している。中国は07年に地上発射型のミサイルで使用済みとなった自国の衛星を破壊したほか、小型衛星にロボットアームをつけて衛星をつかんだり、握りつぶしたりするものも開発中と言われる。ロシアも少なくとも5回、地上発射型のASATを実験した。さらにレーザー兵器の開発も進めるなど、宇宙をめぐる競争が活発化している。
米国家情報局(NI)は、中露の動きを強く警戒、最新報告書では、「数年以内にASATを配備する可能性が高い」と分析している。もし、これが実戦で使用されれば、米国は「目」や「耳」を失う形となるため、早急な強化策が求められている。
宇宙を利用する新型兵器の競争も激化している。中露両国は、宇宙空間をマッハ5以上で飛行する極超音速(ハイパーソニック)兵器の開発に注力、ロシアは来年にも実戦配備を進める構えだ。
この兵器は、ミサイルや航空機から発射された後、極超音速で飛行し、航跡を自由に変えながら目標物を攻撃する。米国が整備するミサイル防衛(MD)システム突破の切り札と位置づける。
米国は出遅れ感が否めない。米国防総省のグリフィン次官(研究開発担当)は「我々はこうした兵器への防衛手段を持ち合わせていない」と危機感を表明。「ミサイルを追跡するセンサー類を、宇宙空間に整備する必要がある」と訴えている。 (北米総局 2018年8月)
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