パキスタン総選挙で圧勝したPTIの今後 ニューデリー・松井聡

デリー松井

パキスタン下院の任期満了に伴う総選挙が7月25日実施され、クリケットの元スター選手、イムラン・カーン氏率いる第2野党で軍の支援を受けているとされるパキスタン正義運動(PTI)が第1党となった。事前の世論調査では、汚職罪で収監中のナワズ・シャリフ元首相のパキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派(PML-N)との接戦が予想されていたが、PTIは小選挙区で選ばれる272議席のうち116議席を獲得し、PML-Nの64議席を大きく上回った。

集会
パキスタン正義運動(PTI)が優勢との報道を受けて、PTIの旗を振って喜ぶ支持者ら=イスラマバードで7月26日、松井撮影

圧勝の背景にあるのは国民に広がる「閉塞感」だ。PTIの支持者の多くは若い世代が中心だ。選挙前にイスラマバードの街中で有権者に話しを聞くと、20~30代の多くはPTIを支持すると答えた。大半は不平等や縁故主義など支配階層が固定化された現状に不満を持っており、「カーンなら社会を変えてくれる」と期待していた。パキスタンは1947年の独立以来、通算30年以上に及ぶ軍政期をのぞき、政権は大地主や実業家が率いるイスラム教徒連盟(PML)やパキスタン人民党(PPP)が担っており、国民は特権階級による政治支配に辟易していた。また、「2大政党以外のPTIに一度やらせてみるか」という動機で投票した人も少なくないとみられる。日本の民主党の政権交代時と似た状況とも言え、国民の期待が裏切られた場合には支持層が一気に離れる危うさもある。

カーン新政権の今後だが、軍との関係が焦点となる。PTIの創設者の一人でカーン氏の元側近は取材に、軍はカーン氏と1996年のPTI設立以前から関係を持っていたと明かした。カーン氏は、政治家になる前に病院を設立し「篤志家」として名を売ったが、これは「政治家になるためのステップ」として、軍情報機関(ISI)元長官のハミド・グル氏が描いたシナリオだったという。カーン氏はある意味では軍が手塩にかけて育ててきた政治家なのだ。

ただ、カーン氏の性格は「独善的で他人の意見を聞かない」(地元ジャーナリスト)との評価もある。カーン氏が軍の意向に沿わない事態が起きた時は、当初は軍と良好な関係を持ちながらその後反目したナワズ・シャリフ氏の二の舞にならないとも言い切れない。両者の関係が国の今後を左右しそうだ。(ニューデリー支局 2018年8月)

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