響き合う文化 北京・河津啓介

河津啓介 本社員

「美し過ぎる。センスの塊だ」。日本で絶賛される中国の映画ポスターデザイナーがいる。宮崎駿監督「千と千尋の神隠し」、是枝裕和監督「万引き家族」などの中国版ポスターを手がけた黄海さん(42)だ。

2007年に初めて映画ポスターを制作して以来、中国国内で多くのヒット映画を支え、陳凱歌氏や賈樟柯氏ら中国の名だたる監督と仕事をしてきた。

大胆な構図や絵画を思わせる繊細な表現で、その映画の本質を浮かび上がらせる。創作の秘訣を問うと「秘訣がないことが秘訣。創作に近道はなく、時間をかけて誠実に取り組むしかない」との答えが返ってきた。

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「デザインは引き算だと思っています」。過去の作品が並ぶ自らの事務所
で、黄海さんが語った=北京で河津啓介撮影

「中国文化が最も美しい」と言うほど自国の美意識に強い誇りを持つが、排外的な考えとは無縁だ。「どの国にも素晴らしい美の体系がある」と語り、特に日本には「同じ東洋文化」に属すると特別な親近感を抱いていた。毎年訪日し、現在の中国にない「静けさ」を味わうそうだ。

北京市内の黄さんの事務所を訪ねると、「ドラゴンボール」や「MONSTER」など日本の漫画が書棚に並んでいた。仕事部屋には、中国の張芸謀監督の映画「活きる」の日本版ポスターもあった。「日本のデザインは素晴らしい。伝統的な要素を、現代に生かす点が特に秀でている」と語った。

日中関係を振り返ると、1978年に改革開放政策が始まった後、高倉健さん主演の「君よ憤怒の河を渉れ」などの日本映画が中国を席巻し、映画の作り手にも影響を与えた。その後、若い世代は日本の漫画やアニメを見て育った。7月に京都市で発生したアニメ制作会社「京都アニメーション」の火災では、たくさんの中国人ファンが追悼と激励の声を送った。

一方で、中国と比較して、日本は中国の現代文化に対する関心は決して高くなかったように思う。しかし今、黄さんのように日本人を魅了する独自のデザインを生み出す作り手が現れた。互いに刺激し、高め合う日中文化交流の新時代を感じた。(中国総局 2019年9月)