モディ外交の独自性 ニューデリー・松井聡

デリー松井

インドのモディ政権の外交を見ていると、「自立」と「独自」という言葉が最も当てはまると感じる。モディ首相は、ネパールやインドネシアの首脳と会談して中国の現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」をけん制したかと思えば、今度はすぐに中国に出かけ習近平国家主席と会って関係強化を約束する。また、米国や日本と安全保障での連携を強化する一方、インドへの最大の武器供給国は米国と対立するロシアだ。これは、冷戦期にインドと旧ソ連が親密だった歴史的経緯があるためだが、モディ氏は相反するとも取れる外交を同時に進めている。

この外交姿勢の理由について、印シンクタンク「国防研究分析所」のカリャナラマン氏は「地政学的な要因がインドを片側の陣営だけに肩入れできないようにしている」と説明する。インドは、隣国の中国とは、軍事衝突回避や経済関係強化を模索しなければいけないが、ネパールやスリランカなど南アジアでの中国の覇権主義的な動きは容認できない。インドはこの中国の動きに対抗するため、米国や日本と安全保障で協力を進めるが、ロシアや、インドにとって第3位の原油供給国であるイランとも良好な関係も維持したい。様々な局面で微妙なバランス感覚が要求される綱渡りのような外交だが、カリャナラマン氏は「モディ氏は今のところ上手くやっている」と評価する。インドの地政学的な重要性や経済市場の大きさを利用しながら、巧みに立ち回り各国と良好な関係を維持しているという。

一方、インドにとって目下の課題は、米国によるロシアとイランへの経済制裁だ。インドはロシアからミサイル防衛システムを購入する予定だが、対露制裁に触れる恐れがある。さらに、イランからの原油購入や港湾整備での協力も難しくなるかもしれない。米国は対中けん制でインドを取り込もうとしているが、米国の政策はインドに困難を突きつけてもいる。インドは米国に制裁からの除外を求めていく方針だが、ロシアやイランと現在のような関係の維持が難しくなった場合、インドがどのような外交政策に打って出るのか。独自外交の今後に注目したい。(ニューデリー支局 2018年7月)

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