「闇のビジネス」に要注意 北京・赤間清広

北京赤間第三者に先に商標登録されてしまうと、正当な権利者でも取り消すのが難しい。それが中国の実態です」。こう警鐘を鳴らすのは、日本貿易振興機構(JETRO)北京事務所の担当者だ。

第三者が中国で勝手に日本の有名ブランドを商標登録する「窃盗事件」が後を絶たない。「例えば、これです」と担当者が見せてくれたのは、日本の「地域団体商標」(地域ブランド)に関する登録状況調査。今年3月時点で、外国の企業や個人が中国で商標出願した日本の地域ブランド数は29件にのぼる。1年前に比べ、7件増だ。

出願内容を見ると、中国内での「ブーム」が良く分かる。まず目に付くのが「近江牛」「飛驒牛」「三田牛」など有名和牛ブランド。豚肉の消費量世界一の中国だが、最近は牛肉人気が高く、味のいい和牛は特に高値で取引されている。「草津温泉」「熱海温泉」など有名な温泉地や、「京染」「九谷焼」「江戸切子」など特産品の申請も多い。こちらは日本旅行ブームの反映とみられる。

米国の強い圧力にさらされ、中国でも最近は外国の地名や有名ブランドを第三者が勝手に商標登録することは難しくなっている。しかし、地域名と商品名を組み合わせた地域ブランドは中国での知名度がまだ低く、「早い者勝ち」で認められてしまうケースもあるという。

有名企業も「中国リスク」に直面している。北京市内の大型ショッピングモールに「無印良品Natural Mill」の看板を掲げた店がある。外観も、並んでいる商品も日本の「無印良品」そっくりだが、運営しているのは無印ブランドを展開する良品計画(本社・東京)とはまったく関係のない中国企業だ。良品計画は中国進出に合わせ、無印ブランドの商標登録を進めたが、タオルなど一部分野で中国企業に商標を先に取られてしまった。良品計画は商標奪還を目指しあらゆる手を尽くしてきたが、先行取得者の厚い権利をいまだに突き崩せずにいる。

中国社会の成熟に伴い、企業や労働者の権利保護も速足で強化されつつある。一方でその権利を悪用しようともくろむ「業者」も数知れない。商標を調べると「闇のビジネス」の一端が見えてくる。(中国総局 2019年6月)