レッテルの魔力 ワシントン・古本陽荘

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「トランプ米大統領にどんな能力があるのか?」と問われた際は、「レッテル貼り」と答えることにしている。人の特徴をきわめて短い言葉で分かりやすく、しかも蔑みながら表現する能力においては天才と言っても過言ではないからだ。

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を「ロケット・マン」と呼んだのはまだ愛嬌があって、ニックネームと言える範疇かもしれない。だが、政敵に対する表現ぶりは、相手を窮地に追い込む力を持つ。2016年大統領選の共和党候補者指名争いでは、同党のエリートたちが期待していたジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事を「ロー・エナジー・ジェブ」(元気のないジェブ)と呼び、その言葉は何度もテレビやネットで再生された。討論会で、冷静にまじめな議論をしようとするブッシュ氏の姿勢は、プロレスの試合に乗り込んできたようなノリのトランプ氏とは対照的。トランプ支持層を超えて「うまく言い当てた」という声が上がり、ブッシュ氏失墜の要因の一つとなった。

今回の大統領選でも民主党の大統領候補らにさっそくレッテルを貼っている。ジョー・バイデン前大統領は「スリーピー・ジョー」(眠たそうなジョー)。エリザベス・ウオーレン上院議員は、ディズニー映画の主人公にもなった入植期の女性先住民「ポカホンタス」だ。ウォーレン氏は先住民族の血が若干、流れていることから公的文書の人種欄に「先住民族」と申告していたことを謝罪している。

最新はインディアナ州サウスベント市長のピート・ブティジッジ氏の「アルフレッド・E・ニューマン」。外国人には難しいが、MADという著名なコミック雑誌のマスコット・キャラクターの名前だ。何となくにやけた表情がよく似ているが、前歯が欠けていて間が抜けた感じがする。

短い言葉で分かりやすく、相手の特徴を表現。しかも、そのレッテルが攻撃兵器となる。今回の大統領選でも、レッテル貼りで討論会を乗っ取ってしまうような展開を目指しているのだろう。

テレビの娯楽番組で鍛えられたトランプ氏の感性にはただ驚かされる。もちろん、そんな大統領選が望ましい訳はない。(北米総局 2019年6月)