インドネシア首都移転の本気度 ジャカルタ・武内 彩

ジャカルタ武内

インドネシアの首都がジャカルタではなくなるかもしれない。4月17日の大統領選挙で再選を確実にしたジョコ大統領が首都移転の検討を本格的に始めると宣言した。直後に候補地を視察するなど、移転に向けた「本気ぶり」をアピールしている。とはいえ首都移転には大規模なインフラ整備が必要で、巨額の財源がいる。国民の理解を得るにも根回しが必要だろう。2024年までの任期中に計画をできるだけ具体化し、目標を共有できる後任に引き継げるかが鍵になりそうだ。

「広大なインドネシアは、ビジネスや貿易など経済の中心地と政治の中心地を分ける必要がある」。5月7日に有力候補とされるカリマンタン島を視察したジョコ氏は改めて首都移転の必要性を説いた。東カリマンタン州にある丘陵地ブキット・スハルトでは「州都サマリンダと港湾都市バリックパパンを結ぶ高速道路の中間にあり、両都市には既に空港があり、港もある」と述べ、既存のインフラを活用できる利点を強調した。その後、中部カリマンタン州の州都パランカラヤなども視察。地元自治体の関係者とも面会し、道路の整備状況などの説明を受けた。

ジャカルタからの首都移転は目新しい話ではない。スカルノ初代大統領、続くスハルト大統領も移転を検討したがインフラの問題などから実現しなかった。スカルノ氏の移転案は旧宗主国オランダへの反発から出たものだが、今回はジャカルタの都市機能の限界が背景にある。

ジャカルタがあるジャワ島には、総人口約2億6700万人のうち6割近くが集中する。中でもジャカルタの人口は1000万人を超え、渋滞は世界最悪と評されるほどだ。移転計画を主導する国家開発企画庁は、渋滞による経済損失は年間で100兆ルピア(約7700億円)に上ると指摘する。そして洪水や浸水被害も頻発する。

一方で、カリマンタン島やスラウェシ島などの地方との経済格差も課題だ。首都移転は地方の活性化
に直結する。ジョコ氏は9日、全国の知事や市長らを集めた会合で「既存のやり方に固執し慣習を重ん
じていては、発展はない」と檄を飛ばした。首都移転を掲げて2期目に乗り出す自身への戒めにも聞こ
えた。(ジャカルタ支局 2019年6月)