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虎門中央法律事務所弁護士 臺庸子

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海外進出の形態として合弁会社(現地のパートナーとの共同出資により現地法人を設立し、ビジネスを行う方法)の設立を選択した場合、現地パートナーとの間で合弁契約を締結することが多く見られる(「第4回海外進出にはどのような形態があるか」の3をご参照)。本稿及び次稿において合弁契約の意義、合弁契約の内容として一般的に検討対象となる事項、合弁契約作成における弁護士の役割について、適宜英文表記の例を織り込みながら概観する。

①合弁契約の意義

合弁契約とは、2社以上の企業が共同出資して合弁会社を設立し、これを通じて共同事業を営むという合弁事業に関する契約をいう。海外において100%子会社を設立して新たに事業を行う場合には、日本の親会社は子会社の経営を自ら単独で支配できるので、設立後の経営、事業の在り方について事前に決めておく必要は高いとはいえない。しかし合弁事業には2社以上の企業が関与することになるため、何らかの不都合が生じた場合、自己の一存で解決できるとは限らない。そこで、合弁企業の仕組みや経営を行う方法等について予め他の出資者と合意しておく必要がある。
以下において合弁契約作成に当たって検討し、契約の条項として盛込む要請の高い条項について具体的に解説する。なお、各国の法制度の違いは存するが、本稿では、日本の株式会社とほぼ同様の形態の会社を設立することを前提とする。

②合弁契約に定めるべき条項の内容

 (1)出資比率

出資比率とは、出資当事者の合弁会社に対する出資額の割合である。各当事者の出資比率によって合弁会社の株式保有割合が決定されることが多い。出資割合をどのようにするかは、合弁事業において最も重要な問題となる。例えば、日本法を前提とすると、一方当事者の出資比率が50%を超える場合、当該当事者は取締役会のメンバーを自由に選任することができ、出資比率が3分の2以上となる場合、株主総会の特別決議をコントロールしうることが考えられる。この場合は少数派となる当事者の経営に関する関与をどのように確保するかという問題が生じ得る。

 (2)取締役に関する合意

合弁契約の中で取締役の選任に関する条項は、重要な意義を有する。合弁会社が取締役会設置会社の場合、会社の経営に関する重要な事項は取締役会において決せられるからである。取締役は会社の重要な業務執行に関与するのであり、少数派株主としては自らが選任する取締役が過半数に達しなくとも会社の経営を取締役を通じて監視することが可能となるので、一定数の取締役を選任する権利を確保したいと考える。たとえば、出資比率がX60%、Y40%(X及びYは合弁当事者)の会社において取締役の人数を5名とした場合、以下のように内3名についてXが指名する者、2名についてYが指名する者をそれぞれ選出する旨を規定することが考えられる。Companyは合弁会社を指す。

The Board of Directors of the Company will initially be comprised of five directors, three to be appointed on nomination of X, and two to be appointed on nomination of Y.

この場合、少数派株主Yとしては取締役解任について何も定めないと、株主総会でXの意向に基づきせっかく選任した取締役を解任されることもあり得るので、併せて、取締役の解任については、当該取締役を指名した当事者のみが決定することができる等の定めを置くことが考えられる。

 (3)取締役会での少数派株主選任の取締役の拒否権

上記のとおり、取締役会でそれぞれの当事者が派遣する取締役の人数を決めておくだけでは、多数派が決議をコントロールできる状況に変わりはない。このため、重要な事項について少数派株主の利益を保護するために、取締役会の決議において、取締役の全員一致を要件とする定めをおくことがあり得る。このように、取締役会の決議要件を加重することにより、実質的に少数派株主に拒否権を付与することになる。拒否権の対象となる事項については、当事者間の交渉により定められることになる。

 (4)配当の合意

合弁契約において配当についての取決めを規定することがある。一方株主が他方の株主に対して、一定の配当を保証することもある。また、当事者間で合弁会社への関与の度合い、配当の関心などの観点から、異なった配当を行う場合がある。

 (5)資金調達

株式会社の株主は有限責任であるため、原則として追加出資義務を負わない。そのため合弁会社に資金調達の必要が生じた場合、合弁契約において、全ての合弁当事者に追加出資義務を負わせる定めをおく必要がある。
合弁会社を設立後、エクイティによって資金調達を行う場合、当初定めた出資比率が変動する可能性があり、合弁契約に、合弁会社が株式等を発行する場合には、各当事者がその出資比率に応じた引受権を有する旨を規定することが多い。かかる規定の英文での表記の例は以下のとおりである。各合弁当事者(X、Y)の出資割合は50%宛とする。

Each of X and Y shall provide 50% of all funds necessary to finance the Company and any increase or decrease of the issued share capital of the Company shall be effected in such a manner that there shall be no change in the Percentage Interest of X and Y in the Company.

だい・ようこ 1980年3月上智大学外国語学部卒業。2000年10月東京弁護士会登録、虎門中央法律事務所入所。主に金融法務、不動産取引、労働問題の分野の相談、訴訟の各案件について18年余りに渡り代理人を務めている。また、国内外を問わずM&Aの案件ではストラクチャー考案の段階から関与し、限られた時間の枠内でデューデリジェンス を実施し、各クライアントのニーズに沿った報告を行う。その他、企業コン プライアンス、リスク管理に関する相談、講演のご依頼も頂いている。