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望月

望月崇司

虎門中央法律事務所弁護士

前号では海外進出時に採りうる進出形態として駐在員事務所、支店、子会社、合弁会社について説明したが、本号では、実際に現地パートナーと事業を共同するにあたり採りうる契約形態について検討する。

 

1. 現地パートナーとの契約形態

海外進出の際に信頼できる現地パートナーを確保することの重要性は本コーナーでも繰り返し述べてきた。これは、進出形態が支店、子会社ないしは合弁会社のいずれであろうと共通する事項である。本号のテーマは、このビジネスの成功の鍵となる現地パートナーと「どのような契約関係とするか」である。

主要な契約形態としては、(1)販売店契約・代理店契約、(2)ライセンス契約・共同研究開発契約、(3)合弁契約を挙げることができる。

 

(1) 販売店契約・代理店契約

メーカーが海外進出し工場を設立したが、自ら商品販売の手段や販促ルートを有していない場合に、かかる販促ルート等を有している現地パートナーと販売に関する提携を行うことで商品を効果的に販売するという手法がとられることがある。かかる手法を実現する契約形態が「販売店契約」ないし「代理店契約」である。これは、日本から商品を輸出し、現地パートナーに販売してもらうという間接投資のケースでも一般的である。

ところで「販売代理店契約」という言葉をよく耳にするが、法的には「販売店契約」と「代理店契約」とは別物である。まず「販売店契約」(Distributor Agreement)とは、販売店がメーカーから商品を仕入れると同時にその販売権を取得し、顧客に対して商品を再販売する契約をいう。これに対して「代理店契約」(Sales Agency Agreement)とは、代理店がメーカーの代理人として、メーカーの製造した商品を顧客に販売する契約をいう。

両者の大きな違いは、在庫リスクを誰が負うかという点と、顧客との契約当事者が誰であるかという点である。「販売店契約」の場合、メーカーが販売店に対してまず商品を販売し、その時点で商品の所有権は販売店に移転することになる。したがって、販売店は在庫リスクを負担することになる。他方、販売店は自己が取得した商品を顧客に転売することになるため、顧客との契約関係に立つのは販売店であり、したがって、販売店が販売価格を決定でき、自らに収益を帰属させることができることになる。これに対して「代理店契約」の場合、代理店はあくまで仲介人としてメーカーと顧客との間に入るだけである。したがって、代理店が在庫を抱えることはなく、他方、販売価格を決定できるのはメーカーとなり、代理店は、手数料のみを収受することになる。

このように「販売店契約」と「代理店契約」は似て非なるものである。契約書の表題や各条項の表題の名称に惑わされず、契約内容を精査し、自社のニーズや希望に合致した契約となっていることを確認することが肝心である。

 

(2) ライセンス契約・共同研究開発契約

メーカーがその有する技術・ノウハウ・知的財産権などの利用を第三者に許諾し、第三者はかかる技術等を用いて商品を製造し、その販売するという契約関係をいう。技術等を提供する当事者を「ライセンサー」といい、技術提供を受ける当事者を「ライセンシー」という。ライセンサーは技術等の提供する対価として、ロイヤルティという使用料を受け取る。ロイヤルティの定め方は様々あり、例えばライセンス開始時点にまず支払うべき金額(Initial payment)を定めることも、技術の利用により得られた利益のうち一定のパーセンテージを随時受領するというランニング・ロイヤルティ方式を採ることも可能である。

このようにライセンス契約においてライセンサーは技術を提供するだけであるため、必ずしも海外に拠点を設けている必要はない。そのため、間接投資において利用されるケースが多い。

実際に海外進出した後に現地パートナーとノウハウを共有し、新たな商品を共同開発するという場合には、共同研究開発契約などを締結することになる。この場合、業務の分担、費用の分担、成果物の帰属、成果物の利用などについて詳細に定めておくことが望ましい。

 

(3) 合弁契約

2社以上の企業が共同出資して合弁会社を設立し、これを通じて共同事業を営むという合弁事業に関する契約が合弁契約である。進出形態の選択において合弁会社を選択した場合、基本的には現地パートナーとの関係はこの合弁契約関係となる。

前号でも説明したが、合弁会社においては現地パートナーと共同経営することになるため、経営方針の違いや利益の分配に争いが生じることがある。そこで、合弁契約にあたっては、出資比率、役員の選解任権、重要事項の決定方法、剰余金の配当、費用負担について明確に定めておくことが重要である。

2. 収益性とリスクとは表裏一体の関係であること

契約形態を選択する際に、大きな視点として、収益性とリスクとは表裏一体の関係にあるという視点を持つことが有益である。例えば、ライセンス契約による場合、ライセンサーは特段投資リスクを負うことなくロイヤルティを受領するが、その収益はライセンシーの売上げの数パーセントということとなる。他方、合弁契約を締結すれば現地パートナーと売上げをその出資比率等に応じて大きく利益を上げることができるが、出資等で多くの投資をしており、そのリスクも大きい。

この視点は事業性に関する調査結果との関係で利用するのが有益である。つまり、調査の結果、事業性が高いと判断されれば、合弁契約などリスクをとった契約形態も選択肢の一つとなる。他方、事業性がさほど高くない場合にはライセンス契約を選択するということも合理的だろう。この判断を見誤ると、本来は合弁契約で大きな利益を上げられたにもかかわらず、ライセンス契約を選択したことでロイヤルティ収入に限られてしまうという事態となりかねない。逆に、リスクをとって合弁契約を締結したが、蓋を開けると事業性が低く、投資に対して十分な収益を得ることができないというケースもある。契約形態の選択に当たっては十分な調査とそれに見合った契約形態の検討が必要なのである。

 

3. まとめ

上記のとおり、すべての契約形態にメリットもあればリスクもあるが、肝要なのは、自社の状況にとって最適なバランスの契約形態を選択したうえで、当該契約を締結する前に各条項をくまなく精査し、メリットとリスクのバランスを失していないかを検討することである。このような契約形態の選択及び当該契約書のレビュー業務も、弁護士を活用するべき代表的な場面といえる。一度契約してしまうと、それを後に変更することは困難となることから、弁護士による早期の関与が望ましいといえる。

望月崇司 経歴

2002年3月                   上智大学法学部卒業

2008年3月                   慶應義塾大学法科大学院修了

2009年12月                  虎門中央法律事務所入所

2016年5月     Georgetown University Law Center (LL.M. in International Business and Economic Law) 修了

2016年9月~2017年7月        AS America, Inc. d/b/a American Standard Brands勤務

2017年7月                   米国ニューヨーク州弁護士登録

2017年9月                   虎門中央法律事務所復帰

 

訴訟などの紛争処理案件に多く関与し、特に、被告/債務者が海外に居住するケースなどの国際訴訟に精力的に取り組んできた。法分野としては知的財産権(主に著作権法)に関する紛争・相談等を多く扱ってきた。 2016年9月から2017年7月まで、アメリカに所在する日系資本のメーカーに企業内弁護士として勤務。同社において、契約書チェック・管理、訴訟対応・管理、コンプライアンスなど企業内弁護士として幅広い業務に関与した経験を活かし、現在、グローバルなリーガルアドバイスを提供している。