1原油ステーションポンプ中国が「一帯一路」の拠点と位置付ける、ベンガル湾に面したミャンマー西部ラカイン州のチャウピュー経済特区(SEZ)。「ベンガル湾にミニ・シンガポールが誕生する」と報じられた中国主導の巨大な経済開発計画は今、ミャンマー側の抵抗で大幅な規模縮小を迫られている。チャウピューにはSEZとは別に、中国企業が建設した原油陸揚げ施設=写真=がすでに稼働し、そこから中国本土に直接つながる石油パイプラインを通して原油の搬送が始まっている。一帯一路の海と陸との結節点として機能し始めている中国のインド洋進出の最前線・チャウピューで、中緬関係の今後や「一帯一路」の行く末を探った。

 

岛欢迎您」

 

「ほら。あれだ」。漁船の船頭が指さす方向に突然、近代的な港湾施設が現れた。桟橋に設置された4基の黄色いタワーは、タンカーから原油を積みおろすポンプ設備だという。

チャウピューの漁港から1時間ほど内海を進んだ、「マディ島」にある中国国有企業「中国石油天然気集団」(CNPC)の原油陸揚げターミナルだ。

奥には、石油貯蔵タンクや管理施設らしい中国風の建物も。資料によると、桟橋には30万ト2原油ステーション中国語歓迎ンの超大型タンカーが接岸可能で、タンクには60万立方メートルの原油を貯蔵しておくことができるという。

海上からは人影は見えないが、中国人100人以上が駐在しているという。岸壁のコンテナには、中国語で「马德岛欢迎您」(ようこそマディ島へ)との文字も読める=写真

だが、舳先に立って写真を撮っていると、「中国人は、外国人がここに来ることに神経質になっている。写真は目立たないように撮ってくれ」。地元ラカイン族の船頭にそう注意された。

 

パイプラインの出発点

 

中国側が外国人の訪問を警戒するのは、約3000人が半農半漁で暮らすミャンマーの小島が、中国のエネルギー安全保障上、重要な意味を持っているからだ。

3石油パイプライン地図ターミナルからは、ミャンマーのラカイン州、マグウェイ管区、マンダレー管区、シャン州を横断して中緬国境を越え、中国雲南省瑞麗を経て昆明方面へと続く、全長2370キロに及ぶ「ミャンマー・中国石油パイプライン」が続いている。

中東からの原油をマラッカ海峡や、周辺各国との間で領有争いがある南シナ海を経由しないで直接、中国本土に送ることができる。現時点では、インド洋から中国本土へと直接つながるパイプラインは、この1本だけだ。タンカーからパイプラインに積み替えるマディ島のターミナルは、中国が初めて手に入れた、「21世紀の海のシルクロード」の、海と陸との結節点だ。

地元住民には、中国が実質的に島の一部を支配する現状に不満もあるようだ。「ここはミャンマーなのに、中国に気をつかわなければならない。あなたには、不自由な思いをさせて申し訳ない」。船頭はそう謝った。

 

「一帯一路の代表的プロジェクト」

 

2010年から始まったパイプラインの工事は15年にはほぼ完成。試験操業が始まったが、正式な操業開始は昨年4月10日にまでずれ込んだ。この日、北京を訪れた当時のティンチョー・ミャンマー大統領が習金平・中国国家主席と会談して正式稼働に合意。その日のうちに、ターミナルの桟橋に接岸した大型タンカーからアゼルバイジャン産の原油14万トンが陸揚げされた。原油は約1カ月かけて中国へ運ばれ、石油パイプラインは着工から7年を経て正式に操業を開始した。

石油とは別に、チャウピュー沖で採掘される天然ガスを中国へ送るパイプラインも石油パイプラインと同じルートで建設され、13年から稼働している。天然ガスパイプラインの搬送能力は年間120億立方メートル、石油は年間2200万トン。CNPCは2010年の着工以来、ラカイン州で学校や病院建設などの社会貢献活動に注力。パイプライン使用料をミャンマー政府に支払うことや、石油や天然ガスの一部はミャンマー国内にも供給されることなどを強調し、プロジェクトは中国だけではなく、地元ミャンマーにも貢献することをアピールしてきた。

操業開始の日、中国国営メディアはパイプラインについて「中国にとって4番目に大きなエネルギー輸入ルート。『一帯一路』の枠組みの中で、互恵ウィンウィンの代表的なプロジェクトだ」と、誇らしげに報じた。

 

軍事独裁政権下で建設合意

 

マラッカ海峡を経由しない中東原油の輸入ルートを模索していた中国で、ミャンマーを経由するパイプライン建設構想が持ち上がったのは2000年ごろだという。経済開発が遅れた西南部の雲南省政府などの熱心な働きかけもあり、政府は04年、当時のミャンマー軍事政権との間で建設に関する交渉を開始した。

日本のアジア経済研究所がまとめたレポートによると、当初、ミャンマー側が強い関心を示したのは、自国産の天然ガスを輸出でき、より自国の利益となるガスパイプラインの建設だった。だが軍事独裁政権は、民主化運動指導者だったアウンサンスーチー氏を自宅軟禁して孤立し、欧米の厳しい経済制裁下にあった。中国は国際社会で唯一、内政不干渉を掲げて軍事政権を支え、軍事独裁の維持に欠かせない存在になっていた。

軍事政権は中国の意向に逆らえず、両国は05年に石油と天然ガスのパイプライン建設に合意。09年にはCNPCによる建設が決まった。翌10年6月、この年の総選挙で大統領に就任するテインセイン・ミャンマー首相と、訪緬した中国の温家宝首相(当時)が出席して着工式が開かれた。

 

巨大な開発構想

 

中国は2011年のミャンマー民政移管後も、チャウピュー拠点化の動きを進めた。テインセイン政権は14年、経済特区(SEZ)法を制定し、ヤンゴン近郊のティラワ、南部アンダマン海沿いのダウェーとともに、チャウピューをSEZ予定地に指定。15年12月、中国最大の国有企業グループ「中国中信集団」(CITIC)を中心とした企業連合が、チャウピューSEZの開発権を落札した。

4チャウピューSEZ計画図計画では、マディ島とラムリー島の2カ所計250ヘクタールに、大型貨物船10隻が同時に着岸できるミャンマー最大の深海港を建設。さらにラムリー島に1000ヘクタールの工業団地、従業員などが暮らす500ヘクタールの住居エリアなどを建設する。

同じSEZ法で指定された、日本の官民の協力で開発が進むティラワの工業団地は、造成中のBゾーンを含めても総面積600ヘクタールに及ばない。チャウピュー工業団地はその1・6倍の面積だ。巨大計画の事業費は総額で約100億ドル(約1兆1000億円、内訳は深海港が72億ドル、工業団地が24億ドルなど)に上り、その一部は中国からの借款で賄われる。

 

進まない計画

 

5SEZ予定地だが、ティラワの開発が順調に進み、工業団地ではすでに日系など多数の企業が操業を開始しているのに対し、チャウピューSEZはほとんど進展がないままだ。

漁船から見た深海港予定地は、海岸沿いにうっそうとした林が広がるだけで、工事は一切行われていない。チャウピュー市街地から車で1時間ほどの工業団地予定地を訪ねても、なだらかな丘陵地帯の原野に住民の家々が点在するだけだ=写真

予定地周辺の村では、手掘りの井戸から原油が産出する。手製の動力付きのつるべを使って汲6手堀原油井戸み出した原油を、精製せずにそのままディーゼルエンジンに使っているという地元住民=写真=は、「かつては原油を地元の精製工場に販売していたが、今は自家消費程度にしかならない。工業団地が来れば雇用も増えると期待したが、期待はずれだ」と苦笑した。

別の住民は「予定地の土地はすでにヤンゴンの会社や軍人に買い占められている。でも、計画が実現するかどうかまだわからないのに投資するのは、宝くじを買うのと同じだ」と話した。

揺れ動く中緬関係

 

計画停滞の背景にあるのは、2011年のミャンマー民政移管以降、揺れ動く中緬関係だ。

大統領に就任したテインセイン氏は同年9月、北部カチン州で中国企業によってすでに着工されていた「ミッソンダム」工事を突然中断させ、世界を驚かせた。

アウンサンスーチー氏の自宅軟禁解除など民主化に舵を切ったテインセイン大統領の下で、欧米など国際社会との関係は劇的に改善した。パイプライン建設と並んで中緬協力の象徴的存在だったミッソンダム計画の中断は、直接的には大統領が地元住民の反対運動に応えた形だが、ダムの発電量の9割を中国に供給することなど中国の資源収奪的な姿勢への反発、さらに、その背後にある巨大な隣国・中国への警戒感など、ミャンマー国内の根強い「反中感情」が、欧米との関係改善を背景に、この機に噴出したものだと見られている。

石油・天然ガスパイプライン事業は、テインセイン政権下でも進められた。だが石油パイプラインが15年に完成しながら、正式稼働がその後2年も遅れたのも、中緬関係の冷え込みが背景にあるとされる。

15年の総選挙で国民民主連盟(NLD)が圧勝し、翌16年にテインセイン政権が退陣してアウンサンスーチー氏を事実上の最高指導者とするNLD政権が発足した。インド洋への出口としてミャンマーを重視する中国の習金平政権は、これを機に再びミャンマーに対する影響力を強めようと、スーチー氏に対する積極的な働きかけに乗り出した。

スーチー氏が国家顧問就任後、東南アジア諸国連合(ASEAN)以外の初めての外遊先として選んだのは北京。16年8月、北京で会談した習氏は「一帯一路構想に基づく連携強化」を訴え、スーチー氏も中国の支援に謝意を示した。スーチー氏の訪中はその後も、北京で「一帯一路サミット」が開かれた17年5月、さらに同12月と続き、日本訪問が16年11月の1回のみなのに比べると、「親中」姿勢が際立つ形になっている。

 

ロヒンギャ問題を利用

 

ƒ~ƒƒƒ“ƒ}[@ƒX[ƒ`[‚³‚ñ‚ÌŽ©‘î@ƒ„ƒ“ƒSƒ“Žs“à‚É‚ ‚é@m“ÁWnスーチー氏を自宅軟禁した軍事独裁政権を強く支えたのが中国=写真はスーチー氏が軟禁されていたヤンゴンの自宅。さらに長く英国で暮らしたスーチー氏は元々、欧米への親近感が強い人物で、中国に対する感情は決してよくなかったとみられる。

国家顧問就任後に「親中」へ傾いた最大の要因は、「ロヒンギャ問題」だ。国連安保理で昨年11月、ロヒンギャ問題で法的拘束力のあるミャンマー政府非難決議の採択が議論された際、これを阻止したのが中国だ。ロヒンギャに関する国際社会の非難を「一方的だ」と拒否するスーチー氏の立場を、その後も支持し続けている。

ミャンマー最大の内政問題である少数民族武装組織との和平実現でも、スーチー氏には中国の協力が欠かせない。少数民族問題を知り尽くした軍部に比べ、長年、民主化運動のみを担ってきたスーチー氏やNLDは少数民族とのコネクションに欠け、中国の仲介に頼らざるを得ないとの見方がある。

中国国境方面の少数民族武装組織の多くが、背後で中国の支援を受けてきたとされる。軍部にとっては、1948年の独立以来、国境周辺に存在する少数民族への対応が常に最大の懸案だった。

「軍部には伝統的に『中国に気を許すと、国境地帯は中国の支配下に入ってしまう』との警戒感が強い。組織の隅々にまで、気を許してはいけないという認識が浸透している。しかし、スーチーさんやNLDは政治に慣れておらず、警戒感が薄い。北京に招かれて『ロヒンギャ問題では我々が守ってやっている』と言い含められ、『ミッソンダムを再開しないと、ただでは済まないぞ』と脅されているのが、中緬関係の現状だ」。ヤンゴン駐在の外交筋は指摘する。

「ただ、NLDが『親中』というのは言い過ぎだ。NLDの中にも、中国と好んで関係を強めたいという人はいない。『中国に対して弱い』という言い方が正しいのだろう」

 

「スリランカの先例」

 

だが、最近になってスーチー政権は、チャウピューSEZ計画で中国と距離を置き始めている。

8セアウン顔P今年5月、政府はチャウピューSEZ管理委員会の委員長に、ティラワSEZ管理委員会の委員長を務めるセアウン国家計画・財務副大臣=写真計画・財務省のHPより=を兼任させることを決めた。セアウン氏はテインセイン前政権で計画・財務副大臣に就任。スーチー政権発足で一度は副大臣を辞任したが、SEZ法の制定などに深く関わった経済開発の腕を買われ、再び副大臣に就任した「ミスターSEZ」的な存在だ。

「セアウン氏の役割は『計画の縮小』。チャウピューSEZで『中国のいいなりにはならない』というスーチー政権の意思表示だ」と、外交筋は話す。

きっかけになったのは、同じ「一帯一路」構想をめぐりスリランカで起きた問題だ。セアウン氏の就任と同時期、政権の経済顧問を務めるオーストラリア人のショーン・ターネル氏は「(建設費72億ドルの)深海港計画は馬鹿げている。計画実現のためには、膨大な借金が必要だ。我々は『スリランカの先例』から学ぶべきだ」と指摘した。

m—אln“ú’†ŠØ@‘Η§‚Æ—Z‡@`˜pŠJ”­‚ðŽx‰‡‚·‚é’†‘‚̍‘Šøスリランカの先例とは、同国南部ハンバントタに中国からの融資で建設された国際港湾=写真、2014年・遠藤孝康撮影=が、利用の低迷から融資返済が困難となり昨年、スリランカ政府が港の使用管理権を99年間、中国に譲渡せざるをえなくなった問題だ。中国による発展途上国に対する「債務のわな」の典型例と指摘され、国際社会は、中国によるハンバントタ港の軍事利用を懸念する。

チャウピューでは、深海港運営会社の出資比率が中国側85%、ミャンマー側15%とされていることも明らかになった。日緬の官民が出資するティラワSEZの比率は、日本側が49%、ミャンマー側が51%だ。ミャンマー国内には、チャウピューSEZに関する中国側の姿勢に急速に不信感が広がっている。

「セアウン委員長は、『最初から10隻分もの港は要らない。2隻分を建設して運用し、需要があれば後で拡張していけばよい』との考えだ」と、同委員会のウーマウン副委員長。8月上旬にはセアウン氏とCITICが、72億ドルの深海港計画を約13億ドル規模にまで縮小することで合意したと報じられた。ウーマウン氏は「セアウン氏とCITICの責任者が直接交渉をしている。まだ合意には至っていないが、11月までには合意し契約書にサインしたい」と説明した。

 

「一帯一路」動機に疑問

 

最大都市ヤンゴンから約400キロ離れたチャウピューSEZについて、日本の関係者は「ミャンマーにとって交易上の利益があるわけではない。南部のダウェーSEZと比べても、有利なのは唯一、水深が深く大規模な掘削なしで深海港を建設できるという点だけ。『中国にとっての、インド洋への出入り口』という意味合い以上の、開発の利点は見つからない」と指摘する。

中国のチャウピュー開発計画について、そもそもの動機を疑問視する声もある。「中国が欲しいのは、インド洋への出入り口として自由に使える港湾施設のみ。SEZは、自由に使える深海港を建設するための口実で、実際に工業団地まで建設する気はないのではないか」というものだ。

チャウピューがあるラカイン州は、沿岸で天然ガスなどの地下資源を産出するものの、住民にとっては農業と漁業以外の就労先がなく、ミャンマー国内でも貧しい地方の一つとされる。ロヒンギャ問題で外国人の立ち入りが制限されている地域もあり、観光業も未発達だ。

10チャウピュー街並み日本政府はラカイン州の経済成長に資するSEZ計画自体に、「反対はしない」との立場だ。だが、中国による軍事目的への利用を防ぐため、疑義がある際にきちんと立ち入り検査ができるような項目を契約に盛り込むことなどを、ミャンマー政府にアドバイスしているという。

スリランカの「先例」については、チャウピューでも多くの住民に広がり、計画の実現について半ばあきらめムードも漂っている=写真はチャオピューの町並み。「軍事政権時代の中国の投資は、軍の高官たちを潤しただけだった。中国は、いつも自分のことしか考えていない」。チャウピューの元公務員だという男性(76)は話し、こう付け加えた。

「SEZも、実際の需要と供給のバランスや、地元の利益を無視して進めても、うまくいくはずがない。中国に代わって、日本が計画を担ってもらえないだろうか」

【毎日アジアビジネス研究所 西尾英之】

※チャウピュー取材協力=「日本ミャンマー支援機構」(横浜市)

 

ミャンマー経済特区 それぞれの特徴

 

経済特区の略称「SEZ」は、英語の「スペシャル・エコノミック・ゾーン」の頭文字をつないだもの。2014年1月成立したミャンマー経済特区法によると、特区内への投資には会社法や投資法など外資を規制する他の法律は適用されない。管理委員会の許可が得られれば100%外資での進出が可能で、税の減免などの優遇措置を受けられる。

現時点でチャウピュー、ダウェー、ティラワの3カ所が指定されているが、実際に開発が行われ操業が始まっているのは、日本が官民挙げて支援するティラワSEZだけ。今回取り上げたチャウピュー以外の2カ所の経済特区を紹介する。

各経済特区の特徴

SEZ地図1

 

チャウピュー 石油パイプラインがすでに稼働し、中国が「一帯一路」の拠点化狙う。ミャンマー側は規模縮小を要求

ダウェー バンコクに近くタイが注力。インドシナ半島経済回廊の西の拠点として日本も協力へ

ティラワ 日本が官民挙げて支援。他を引き離して先行しミャンマー経済開発のモデルケースに

 

 

 ティラワ 経済開発のモデルケースに

efbc91e38386e382a3e383a9e383af.jpgヤンゴンの市街地から南東約20キロ。ヤンゴン川に沿って新たに河川港が建設され、SEZはその後背地に設けられた=写真現在も日本企業による桟橋の増設工事が進む河川港

軍事政権時代に権勢を誇ったキンニュン元首相の出身地に近く、1990年代から工業化を模索する動きはあったが、実際のスタートは日緬両政府が開発に合意した2012年。3カ所の中では最も後発だが、その2年後には住友商事、丸紅、三菱商事の3商社と三菱UFJ,住友三井、みずほの3メガバンクが出資する工業団地の建設・運営会社が設立され、世界の工業団地でもここだけという日本の官民挙げての支援体制が整った。

すでに405ヘクタールの工業団地1期分は造成が終わり完売。現在は178ヘクタールの2期分を造成中だ。約90社が進出を決めほぼ半数が操業を開始するなど、他を引き離して大きく先行。海外の支援下でのミャンマー経済開発の、モデルケース的な存在になっている。

 

 ダウェー 日本加え始動なるか

2ダウェーPヤンゴンから南に約600キロのダウェー郊外に、深海港と巨大な工業団地を建設する。アンダマン海に面したダウェーはタイの首都バンコクから約350キロと近く、中国にとってのチャウピューと同様、タイのインド洋への出口として注目した同国大手ゼネコン、イタルタイ社が、軍事政権当時から開発を模索してきた。

ティラワやチャウピューを大きく上回る、総面積約2万ヘクタールに及ぶ巨大構想だが、開発権を取得したイタルタイ社1社では資金調達ができず、SEZ指定後も計画は宙に浮いたままになった=写真はタイにつながる高速道路の始発点の看板が立つだけの、ダウェー特区予定地の中心部、2012年・岩佐淳士撮影

2015年になって日本政府が、ミャンマー、タイ両国の要請に応じて開発会社への出資を了解。日本はダウェーを、ベトナム・ホーチミンからカンボジア・プノンペン、タイ・バンコクを経てインド洋につながるインドシナ半島「南部経済回廊」の終点と位置づけており、現在、国際協力機構(JICA)が、ダウェーがあるタニンダーリ管区全体の開発計画を調査中。調査は近くまとまる見込みで、これを受けて開発実現へ向けた3カ国の協力態勢が整うかが注目されている。