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ティラワ河川港の桟橋増設工事現場で活躍するDRM社のクレーンと、同社の横田圭右社長=中央

インフラ整備の加速に伴い、建設重機の需要が拡大するミャンマー。三菱商事と建機レンタル大手「レンタルのニッケン」は2015年、現地の老舗建機販売会社と合弁で、ヤンゴンに建設機械のレンタル会社「ダイヤモンド・レンタル・ミャンマー(DRM)」社を設立した。建機操作の免許制度が一切ない同国でDRM社が取り組んだのは、地元ミャンマー人の建機オペレーターに、徹底して、「安全第一」を刷り込むことだった。【毎日アジアビジネス研究所・西尾英之】

今も河川港の桟橋増設や工場建設で大規模な工事が続く、最大都市ヤンゴン南郊のティラワ経済特区。DRM社の横田圭右社長(49)は、特区工業団地に面した自社の機材ステーションで「地元の企業で働いていた建機オペレーターは、『安全』よりも、どこまで無理ができるかという『腕』を自慢しがち。機械の限界が来ても平気でリミッター(安全装置)のスイッチを切って、重いものを吊り上げようとする。無理をすると必ず事故が起きるのですが」と話した。

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DRM社が制作した、作業の安全マニュアルのビルマ語版

機器だけを貸し出す日本の「ドライレンタル」方式とは異なり、ミャンマーでの建機レンタルは、操作するオペレーター付きで建機を貸し出す「ウェットレンタル」方式だ。派遣した自社のオペレーターが事故を起こして工事を止めてしまっては、レンタル業は成り立たない。ティラワ経済特区への工場建設など、顧客の8割が日系の建設会社だというDRM社にとって、地元で雇用したミャンマー人オペレーター経験者に、「安全第一」を徹底して教え込む必要があった。
ミャンマーの工事現場では、ロンジー(地元の男性が身につける巻きスカート)にサンダル履きの作業員が当たり前だ。まずは現場でのロンジー禁止。ヘルメットのない作業員にはリフトを操作することも許さない。「事故を起こして負傷すれば家族を養えなくなる。毎朝、朝礼を開いて危ない操作を教え込む。ニッケンから指導者が来て講習会も開く。みんな少しずつ意識が変わっていきました」。機材オペレーション部門の副部長、シェインウェンリンさん(36)は、日本語でそう話す。

造船のエンジニアだったというシェインウェンリンさんは、DRM社へ入社後、日本へ出張して「セーフティーファースト」を徹底して学んだ。今は40人を超える同社のミャンマー人オペレーターのまとめ役として、オペレーション部門のトップを兼ねる横田さんを補佐する。「最近は地元企業の現場でも、ロンジー禁止のところが増えてきた。安全第一が効率につながるということが、浸透してきた」と胸を張る。

 

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DRM社の日本語が話せるスタッフたち。左から2人目がシェインウェンリンさん、3人目がチョージンウーさん

同社には横田さんを含め三菱商事から2人、レンタルのニッケンから2人の計4人の日本人が派遣されている。その下にオペレーターを含め約90人のミャンマー人社員が働いているが、営業部や管理部など、オペレーション以外の部門にも、日本の大学に留学し日本で就職活動も経験するなど、「日本企業のスタンダード」を理解している、日本語が堪能なスタッフを配置しているのが特徴だ。

昨年2月に入社したチョウジンウーさん(31)は「営業活動でも、相手にきちんと納得してもらうまで説明する。ルールをきちんと守らなければならないし、日本企業に比べたらミャンマーの会社はゆるいと思う」と話す。DRM社のレンタル商品は、港湾の桟橋工事などで使われる最大180トンのクローラークレーンを始め、油圧シャベル、ブルドーザー、フォークリフトなど約4000アイテムに上る。中には今までミャンマーにはなかった、現場事務所や従業員宿舎などに使われるモジュラー型オフィスもあり、ヤンゴン日本人学校で使われるなど、工事現場以外での需要も生み出している。

「ティラワ工業団地や港湾の建設工事も今後も続き、需要は拡大していく。この国の重機はこれまで中古や老朽品ばかりだったが、新しく、より品質のよいものを現場に提供していきたい」。横田さんはそう話す。