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中国最貧エリアの貴州省が「クラウド」で変貌を遂げている。なぜ、世界最先端のビッグデータ集積地になったのか?日本のNTTデータも進出する「貴州ビックデータ」の現状とその未来を日本企業(中国)研究院執行院長で経済ジャーナリストの陳言氏の分析をもとにひも解いてみた。(毎日アジアビジネス研究所長 清宮克良)

写真は共同記者会見で日中間の通販事業について話すアリババ・グループのジャック・マー会長(右)とソフトバンクの孫正義会長=東京都内のホテルで2010年6月、望月麻紀撮影

マー氏「最後の投資チャンス逃すな」

5年前に貴州省の可能性を予言的に言い当てた人物がいた。

阿里巴巴(アリババ)集団創業者の馬雲(ジャック・マー)会長である。

貴陽ビッグデータ産業集積地区看板陳言氏によると、マー氏は2013年3月、「もし全国で最適の発展地域を3カ所挙げるとすれば、貴州は間違いなく最後の1カ所だろう。もし30年前に(その後に経済発展を遂げた)広東、浙江への投資チャンスを逃していたら、どうなっていたか。今こそ、貴州ではチャンスを逃すべきではない」と語っていたという。中国のシリコンバレーと呼ばれる北京・中関村や深圳をつぶさに見てきた陳言氏は、中国のイノベーションを語る時に「貴州ビッグデータ」=写真はビックデータ集積地の看板、NTTデータ提供=は欠かせない存在と指摘する。

2013年当時の貴州省の状況はどうだったのだろうか。

三菱商事(中国)は2013年10月、社会貢献活動の一環として、同省で植樹イベントを実施した。この地域にかなり深刻化な「石漠化」現象が発生していたからだった。北京で生活する陳言氏は、緑地が黄砂に浸食されて起きる「砂漠化」現象は体験的に感じていたが、「石漠化」は初めて聞いた言葉だった。貴州省の土地が大量に石化、言い換えれば、地上に絶えず長期的に岩が露出していた。土地が次第に少なくなる現象で、同地の土地はますます貧弱になっていた。植樹イベントは「石漠化」現象を防止するためのものだった。

貴陽国家試験区記念石碑遠景実は当時、貴州省ではすでに新しい貧困撲滅対策の方法を検討し始めていた。2013年から、省政府の担当者が頻繁に北京に赴き、「ビッグデータセンター構想」=写真は記念石碑、同=を提言していた。陳言氏は北京で各地方政府の構想を知り、それぞれの担当者が構想する壮大な計画を聞いた。だが、当時、貴州省のビッグプランには大いに興味を持ったというほどではなく、中国進出の日本企業の多くもまだ同省で起き始めていたことにさほど関心はなったようだった。

 

 

貧しい観光の省から脱皮へ

$gb_{C6D9B2BCBBC6B9FB98E4}貴州省には黄果樹瀑布=写真、陳言氏提供=など中国最大の景勝地があり、世界的に見ても希少価値の観光の聖地であることは良く知られている。トン族、スイ族、ミャオ族など数多くの少数民族の文化継承も観光資源の魅力になっている。

観光を除くと、貴州省の人口は3500万で、中国では多いほうではない。面積は17.6万平方キロで日本の本州(22.8万平方キロ)より少し小さいが、土地資源は比較的豊富である。昨年まで、同省は国内総生産(GDP)の2桁(10.2%)成長を維持し、中国で数少ない高成長地区になっている。1兆3540億元(約23兆円)というGDP値は、中国の23省・4直轄市・5自治区の中で下から8番目。貴州省より下の省・自治区は人口も同省よりさらに少なく、当然のことながら競争力が劣る。そうした省・自治区を除いて考えれば、貴州省はGDP値では依然として「落ちこぼれ」の状況であることに違いはない。しかし、その貧困エリアが今、突然、ビッグデータのハイランドになりつつあるのだ。

では貴州省の現状はどうなっているのだろうか。

268px-China_Guizhou.svg米国のアップル社は中国国内で初めてのビッグデータセンターを同省内に建設中で、アップルの提携パートナー・雲上貴州公司は中国大陸部のiCloudサービスの運営を担当する。富士康科技集団(フォックスコン)、中国移動(チャイナ・モバイル)、中国聯合通信(聯通、チャイナ・ユニコム)、中国電信(チャイナ・テレコム)、思科系統(シスコ・システムズ)、華為(ファーウェイ)、騰訊(テンセント)、アリババを含むより多くの企業が貴州省にビッグデータセンターを集中的に設立している。

陳言氏によると、ジャック・マー氏が2013年に貴州省の可能性に言及した際、多くの投資家は同省への投資には懐疑的だったという。今から見ると、マー氏には先見の明があったというべきだろう。その後、世界の大企業が貴州省に来てビッグデータ産業の立地が活発化し、同省は情報技術(IT)ハイランドになることができたが、その理由についてもっと深く分析する必要がある。

恵まれた地理的条件

陳言氏は2017年8月、北京から貴州省貴陽市に行き、ビッグデータ関連のカンファレンスに出席した。8月の北京の気温は35度前後もあり、暑くてたまらないが、飛行機で4時間飛び、正午ごろ貴陽市に到着した。陳言氏の目に入ったのは「さわやか貴州」の看板で、身体中に涼風が吹き抜けるように感じたという。昼でも30度にならず、夜は25度前後で、比較的涼しい気候だ。

陳言氏は同地のこの気候性こそ、データセンターの存立に欠かせないものだと指摘する。温度コントロールはデータセンターが一貫して直面する課題であり、なかでも冷却設備はインフラ整備の重要な構成部分である。データセンターの最善の冷却状態を確保することが、ITのハードウェアの耐用年数を延長でき、電力使用効率を高めるばかりか、サーバー事故のリスクを軽減し、データセンターの運営コストも軽減する。

現地スタッフは口をそろえて「データセンター最大の特徴は高エネルギー消費だ」と言うが、電力コストは支出全体の50~70%を占め、そのうち、冷却過程で消費する電気エネルギーはデータセンターのすべての消費電力の40%を占める。貴陽市周辺の年平均気温は15.1度で、夏の猛暑、冬の厳寒はない。

同時に、データセンター内の精密な設備は環境に対する要求が非常に高く、ほこりやちりなどは全て設備の保護、長期使用に不利である。一方、貴州省の森林カバー率は49%で、中国のなかでは空気はきれいなほうだ。データセンターが重視するもう一つの要素は安全だ。その点、同省は主要な地震帯にはなく、破壊的な地震リスクは極めて低い。また、洪水はほとんどなく、台風、ハリケーン、竜巻、大雪などの脅威もない。

さらに、貴州省は水資源が豊富だ。水力発電の設備容量は全国第4位である。そのうえ、水力、火力併用で、電力は十分あり、エネルギー資源は豊かである。同省は一貫して南方電力ネットワークの電池と称され、「西電東送」の源である。データセンターという電力消費を伴う比較的大きな業務を行う施設を、電力資源が豊富な同省に設置すれば、容易に低廉な電力を得られることになる。

政策の後押し

img_c193c1efe9d743e9f3833ce5464bc32c117755[1]地理的な優位性に加えて重要なのが政策的な後押しである。深圳がイノベーションセンターになったのは政策の賜物である。貴州省でも同じことがいえる。2013年にビッグデータのハイランドになると決定した後、同省政府は直ちに一連の政策を実行した。

2013年は中国の「ビッグデータ元年」と呼ばれる節目の年だ。この年から貴州省の経済政策はビッグデータに傾斜し始めた。翌14年3月、北京で「貴州省ビッグデータ産業プロモーション大会」を開き、そこで同省政府は「すべての省政府部門は自前のコンピュータールームを造成しない」と宣言した。これは企業が貴州省へ来てデータセンターを作る際の条件を提供するためであり、同省はこれによって、全国初の省政府級業務のクラウドプラットフォーム「雲上(クラウド)貴州」を立ち上げた=写真は貴州省貴陽市のモニュメント、陳言氏提供

人材面で貴州省には先端的な人材の優位性はないが、データセンターの建設、運営、維持の人材を探し当てることはできた。しかも、データセンター自体は集約型産業でないため、必要な従業員は多くはいらない。

陳剛氏の役割

「貴州ビッグデータ」にとって陳剛氏(53)が果たした役割は大きい。

陳氏は北京市常務委員在任中、中関村の発展計画を担当していた。その前から、中関村のイノベーション産業を熟知していた。貴州省が経済政策をビッグデータ方面に傾斜させることを決定した2013年、陳氏は北京市共産党常務委員から同省党常務委員に異動し、貴陽市党委員会書記を兼任することになった。

貴州省がビッグデータ関連の企業誘致、資金導入に着手した時、陳剛氏は北京市を訪れ、多数の企業に貴陽市に建設するビッグデータセンターに投資するよう呼びかけた。陳氏は北京市内のIT企業を熟知していたばかりでなく、政策面からこれらの企業を支援した経験があるので、中関村に来て、企業誘致、資金導入を呼びかけられると、企業は自身の必要性からだけでなく、陳氏の面子に配慮して貴州省に行かないわけにはいかなかった。陳剛氏は「貴州ビックデータ」立ち上げに成功し、2017年に河北省党常務委員に異動になり、雄安新区の建設計画を担当することになった。

NTTデータの進出

今年5月、中国国際ビッグデータ産業博覧会(ビッグデータ博)期間中に、阿里雲計算有限公司(アリババ・クラウド)は貴州で展開する次期5カ年計画を発表した。計画によると、将来的に、貧困家庭支援、農業、観光、医療、工業、教育、政府業務、スタートアップの8分野から貴州省のビッグデータ産業を全面的に推進。同時に、貴陽市にアリババ・クラウドのグローバル登録センター、技術サポートセンターの機能を置くというものである。今日のアリババ・クラウドには、ジャック・マー氏の5年前の予測を踏まえ、自ら継続的に貴州省でのビッグデータ業務を強化しようとする決意が込められている。また、アップルの同省におけるデータセンターは、外資企業に同省に進出する大きな決意を与えた。

今年、日立製作所はテンセントとインターネットとモノ(IoT)関連の全面的な事業協力で合意した。日本の大手企業が中国のIT企業と全面協力した初のケースであるが、今後、こうした提携が増えてくると予測される。

科恩成立過程紹介ここ数年、中国のビッグデータ博では日本企業の影は薄かったが、今年、初めて貴州省で開かれたビッグデータ博では、NTTデータが大きな存在感を示した。

NTTデータは2017年9月、中国・アジアパシフィック地域におけるIoTなどビッグデータ活用のソリューション開発・展開を図るため、貴陽市政府、中国科学院ソフトウェア研究所と3者共同で、「貴陽科恩ビッグデータ先進技術研究院」)を設立=写真は設立過程の紹介、NTTデータ提供=した。まずは「次世代スマート交通」、「環境系IoT」を中心テーマとして共同研究・技術実証をスタートさせている。

No2NTTデータは貴陽市政府の協力を得て、新市街区で渋滞緩和の実証実験を行っている=写真の上部はカメラ、同

貴州省貴陽市に駐在するNTTデータの津田博史氏(技術革新統括本部シニアスペシャリスト)は「貴陽市で信号制御のインテリジェント化の取り組み実績を基に、自動運転時代を見据えたスマートモビリティ・プラットフォーム構想に繋げていきたい」と抱負を語る。

貴州の優位性は変わらず

 「貴州ビッグデータ」の成功は、陳剛氏ばかりでなく、習近平総書記の最側近といわれる陳敏爾氏が2012年から貴州省党委副書記、同省政府省長、同党委書記と要職に就き、政治的なリーダーシップを発揮したことでも注目される。陳敏爾氏は2017年7月、重慶市党委書記に就任し、陳剛氏も貴州省を去った後、果たして「貴州ビッグデータ」の興隆は継続するのかと懸念する声も聞こえる。

しかし、陳言氏は貴州省でビッグデータの優位性がひとたび確立されると、今後、中国の他の省が貴州を超越しようと考えても、それは非常に困難だろうとの見方を示している。アリババやアップルに代表される大企業の巨額投資に加えて、ビックデータの専門的人材が集中するため、その他の場所に同様の基地を建設するのがかなり困難になるからだ。何よりも、同省政府が他の省政府とは異なり、「自前のコンピュータールームを造成しない」方針を打ち出し、企業にデータベースを作ることを任せていることが大きい。陳言氏は「貴州省が今後、経済的な重点をビッグデータの使用と開発に置く時に、日本企業がIoTの製造技術、通信の優位性をどのように発揮していくのか、これが新たな課題となるだろう」と日本企業の進出に期待を寄せる。

 

◎毎日アジアビジネス研究所所長

 清宮克良(せいみや・かつよし)

1983年毎日新聞社に入社。水戸支局、社会部、政治部。98年に米ジョンズ・ポプキンス大国際関係大学院(SAIS)客員研究員、その後、ワシントン特派員、政治部副部長、さいたま支局長などを経て、執行役員国際事業室長。中国、インドネシア、ベトナム、ミャンマー、タイ、ロシアでフォーラムやイベントを手がける。2018年10月から現職。

 

◎陳言 (ちんげん)

日本企業(中国)研究院執行院長、経済ジャーナリスト

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1960年、北京生まれ。82年、南京大学卒。82~89年『経済日報』に勤務。89~99年、東京大学(ジャーナリズム)、慶応大学(経済学)に留学。99~2003年萩国際大学教授。03~10年経済日報月刊『経済』主筆。10年から日本企業(中国)研究院執行院長。毎日アジアビジネス研究所コラムニス