20120111dd1dd1phj706000c 大武健一郎 (元国税庁長官、ベトナム簿記普及推進協議会理事長)

前月号に引き続き、東南アジア諸国連合(ASEAN)の国々に進出し、挑戦している企業について紹介したい。

日本は1995年に、いわゆる働き盛りと言われる生産年齢人口(15~64歳)がピークアウトし、総人口も2005年ごろから減少に転じた。働き盛りの人たちが個人消費の原動力であるため、日本国内の内需、特に個人消費は伸び悩んでいる。

そうした状況を見て、海外に販路や製造拠点を求めて進出した企業がたくさんある。日本では特定地域の独占に成功したものの、競争激化で国内の他地域への参入は容易でなく、値下げ競争に巻き込まれると自社だけでなく業界全体が疲弊してしまう。そこで、ASEANに新しい販路を求めて進出したわけだ。

例えば、ラーメンは日本特有の食文化として花開いているが、すでに国内は飽和状態にあり、いわば「ゼロサムゲーム」に陥っている。そこで、石川県内で地域独占に成功したあるラーメンチェーンはタイに進出し、すでに120店舗を展開した。タイの重要な食文化と言われるまでに定着し、大成功を収めている。

さらに、日本の百貨店の海外進出に合わせてASEAN各国に飛び出したラーメン店や日本料理店もある。ベトナムでも、ホーチミン市に進出した百貨店の一角にラーメン店や日本料理店が出店し、客が列をなす人気ぶりとなっている。

こうした成功の背景には、実験的に特定の国へ進出し、日本の有名店としてブランドを定着させることに成功し、進出先の各地やASEAN各国に展開したりして販路を広げている。価格は、現地の富裕層やビジネスマンをターゲットに設定し、「憧れの日本」の食としてのブランドを確立している。

現地スタッフにはまず、日本式の「おもてなし」サービスを教える。例えば、「水を飲み終えた客のコップは、すぐ注ぎ足す」「箸やスプーンを落とした客には、すぐ代わりを持って行く」など、日本では当たり前のサービスを教育することから始めている。それはまさに、お客様の立場に立った「おもてなし」の心を教育することだ。

その結果、日本では特色のない料理店でも、早い時期に進出した店は現地で日本ブランドとして受け入れられる場合が多い。ただ、現地には現地特有の味覚センスがあるので、日本の味そのものではなく、現地の意見を取り入れて味をひと工夫することも必要なようだ。また、日本人から見ると現地の方々は日本人ほどには繊細な味覚センスを持ち合わせていないことも多く、「はっきりした味付けが必要だ」という経営者もいる。

しかも、成功している会社は、優秀な現地従業員を日本で研修させ、実際の日本の「おもてなし」や日本語を指導し、進出国のサービスの向上に努めている企業が多い。副次的に、そうすることで「現地従業員の離職を防いでいる」と語る経営者も多い。

ホームセンターにビジネスチャンス

日本ではすでに飽和状態となっているホームセンターも、ASEANの国々にはほとんど出店していない。ホームセンターには日曜大工や庭の手入れの道具をはじめ多くの日用雑貨が取りそろえてあるが、こうした形態の店はベトナムではほとんど見かけない。そのため、何度も来日しているベトナム人は、ドラッグストアとともにホームセンターに必ず行く、という方が多い。ベトナムも所得水準が上がり、庭の手入れを楽しむ富裕層が増えているのだ。

特に、ハノイに住むリタイア組の富裕層は、郊外や故郷にセカンドハウスを持っている。こうした方々は、日本のホームセンターで購入した製品を使って庭の手入れを楽しんでいる。「ベトナムでは手に入らない、便利で長持ちする製品が、日本にはたくさんある」と、目を輝かせてあれこれ買っている。しかし、大きな植木を切るはさみやのこぎりなどは持ち帰りが不便で困る、という場合も少なくない。

こうした状況を見ると、ホームセンターのASEAN進出はまだ多くはないが、現地展開したら成功する時期が遠からずやってくる。ここにもビジネスチャンスがある。

フィリピンのミンダナオ島に進出した食品加工メーカーの場合、当初は日本国内で水産加工を行っていた。ところが、現地特産のマンゴーやパイナップルの冷凍加工と日本への輸出を開始。その事業はいまや、大手食品メーカーを通して日本に輸出するようになって大成功を収めている。このメーカーに限らず、新展開を求めてASEANの国々に進出し、そこで新たなビジネスチャンスを見つけて成功している企業はたくさんある。

これからの日本企業は労働力が減少し、個人消費も落ち込んでいく日本国内に固執してはいけない。ベトナムなど日本に対して憧れを持つ方々が多いASEAN地域に出て行って、新しいビジネスにチャレンジすることで活路を開いていけると思う。